せかせかと彼らしく忙しなく ページ9
「……でもまあ無神経だよね、ほかの男の前で元カレが出てるテレビ見るとか。そりゃあ心配にもなるわ」
すこしの無言の後、彼はそう言った。確かに、そう言われてみればわざわざ心配をかけるような行動したわたしはバカだし無神経かもしれないけれど。
「ほかの男？」
「昨日一緒にいた人、男だったろ」
途端、点と点が線になった。
きっと、伊沢くんは何か勘違いをしている。わたしがもう別の誰かに乗り換えた可能性すら考えているような、そんな気がした。
「っはは……ふふ、うん、そうね」
伊沢くんはわたしに男がいても構わないだろうし、わたしだって勘違いされたままでも大丈夫だ。別に慌てて弁解する必要もないから、すこし黙っておこうと思う。次に会ったときに目の前で種明かしして笑ってやりたい。彼を茶化すのって楽しいから。
「でも、元カレじゃなくて友達だよって説明したから安心して」
「……っうん」
歯切れの悪い返事に疑問は浮かんだけれど、彼の置かれる状況的に手短に済ませないといけないことを思い出し、些細なことには触れず本題を問う。
「それで、昨日なんで電話してきたの？」
「え？ああ、特に用はないんだけど」
あっさりと返ってくる答えが、いままでの彼を重ねるとどうも不自然で。
「え、なにそれ、怖い」
正直な反応をそのまま口に出してしまった。
「っはは、俺をなんだと思ってんの」
なんだと思ってんのって言われても、伊沢くんが忙しいのは別に友達じゃなくたって想像できるし、元々意味のない電話なんてする人じゃなかったし。
「伊沢くんいつも忙しいじゃん。いまも出先でしょ？」
忙しなく生きていたい彼の毎日に、すこしずつわたしが足を踏み入れていたというのはいま考えるとどうも不思議だ。足を洗って正解だ。
「出先っていうか、オフィス」
「え？めっちゃ仕事中じゃん、ごめん電話なんて」
その矢先、彼を呼ぶ声が聞こえた。
「ううん、大丈夫。あ、ちょっと待って」
わたしとの電話を繋いだまま、向こうにいる誰かに指示を出している。彼にも彼の会社で働く社員にも申し訳ないし、この隙に切ってしまおうかな。
「んーごめん、えっとA、金曜の夜ひま？」
そう考えていると、わたしの名が呼ばれた。
「今週？ひまだけど」
「あ、じゃあその日飲みに行こ」
先程までとは違う、急いだ口調に頬が緩む。せかせかとしている彼にらしさを感じたのだ。
「店予約しとく」
「わかった、ありがとう」
「ごめん、切るよ」
「日曜までお疲れ様、仕事頑張ってね」
「っはーい」
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ウィンターくん(プロフ) - 更新うれしいです！ありがとうございます。ここのとこ2話で話がぐっと進んでますね…！ (2021年4月12日 8時) (
レス) id: 6c1e210fc5 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの。(プロフ) - 初コメントです多分。あまりにも世界観に引き込まれすぎました。ここまで読んで続き！もっと読みたい！早く！ってなりました。読者側がこんなことを言うのも烏滸がましいのですが、文才溢れすぎてもう天才的で他のも読んだことあるのですが全て面白かったです。 (2021年4月10日 21時) (レス) id: 6d66e5d0a1 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ウィンターくんさん» ウィンターくんさんいつもコメントありがとうございます！これからも頑張りますので、よろしくお願いします(^^) (2021年4月9日 22時) (レス) id: bcbdfee6f7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ゆゆこさん» ゆゆこさん、コメントありがとうございます。楽しみにして何度も読み直していただけたとのことで、とても嬉しいです（ ; ; ）これからはもうすこし更新頻度を上げたいと思ってます！これからもどうかふたりを見守っていてください！！ (2021年4月9日 22時) (レス) id: bcbdfee6f7 (このIDを非表示/違反報告)
ウィンターくん(プロフ) - 更新嬉しいです。ご無理なさらず、でもこっそり続きをお待ちしています。 (2021年4月2日 19時) (レス) id: 0f9ee489eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぶっく。
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作成日時：2020年8月10日 23時
