寝なくてもわかる夢見の悪さ ページ7
『伊沢くんごめん』
『わたしは困ってないから』
『明日あたりかけ直すね』
やりきった様子の弟をとっ捕まえて事情を説明した。やっと耳を傾けてくれた弟は反省したような顔を見せているし、元はと言えばわたしが予め説明するべきだったのだ。やましいことは何もない。こちらの誤解は解けた。それでも、今すぐかけ直す気にはなれなかったのでメッセージを送っておいた。
『わかった』
『取り込み中に悪かった』
『ごめんね、また明日』
既読がついたのを確認して、充電を再開させる。明日は土曜日だから夜更かしをしてもいいけれど、なんだかどっと疲れてしまったので結局伊沢くんをテレビ越しで見るのは諦めて、布団を用意した。
……そういえば伊沢くん、どうして電話をかけてきたんだろう。もう一度LINEを開いてみても既読無視で終わっているし急用ではなさそうだ。
この間言ってた飲みの誘いとかかなあ。彼は多忙だからなかなか都合がつかないし、
……あれ、そんな大忙しの彼が夜遅くに電話をかけてくるなんて、やっぱりなにか大切な用事があったのかもしれない。
でも、彼の性質的になにかあるのなら躊躇わず遠慮せず言ってきそうだ。付き合っていた頃、意味の無い電話なんてほとんどしたことなかったし。
ああ、いや、そりゃあまあ学生時代は、多少、夜通し電話して次の朝が大変だった経験はあるけど。でもそれも最初の頃の浮かれていた数ヶ月の話だ。
「Aちゃん」
なぜか、一瞬、ふわりとあの頃の彼の声が脳内に響いた。わたしのことが好きだと伝わるやわらかく甘えた発音の。
こういう呼ばれ方、いつまでしてたんだろう。
必死だったわたしは愛を伝えるので精一杯で受け取れていなかった気がする。そもそも、受け取れるくらいの愛を注いでもらっていたのかもわからないけれど。……わからないのは、わたしの問題か。
もしかすると、意味の無い電話を繋ぎ続けたあの数ヶ月で終わっていたのかもしれないし、それこそ別れを告げるあの瞬間まで続いていたのかもしれない。
真相は闇の中だけど、無理して掘り起こす必要も無い。
どうせ、目を閉じて数秒経てばわたしは寝息をたて始める。そうなればわたしも当然のように闇の中に溶け込むし、右も左もわからなくなって、この寝る前特有のめちゃくちゃな思考回路のことも忘れている。
それに、どっちだって関係ない。
「拓司くん」
このまま寝てしまえば伊沢くんだけにまっすぐたくさんの愛を振り撒く、在りし日のわたしの姿を夢に見てしまいそうな気がしたけれど、気にする余裕もなく睡魔に従った。
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ウィンターくん(プロフ) - 更新うれしいです！ありがとうございます。ここのとこ2話で話がぐっと進んでますね…！ (2021年4月12日 8時) (
レス) id: 6c1e210fc5 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの。(プロフ) - 初コメントです多分。あまりにも世界観に引き込まれすぎました。ここまで読んで続き！もっと読みたい！早く！ってなりました。読者側がこんなことを言うのも烏滸がましいのですが、文才溢れすぎてもう天才的で他のも読んだことあるのですが全て面白かったです。 (2021年4月10日 21時) (レス) id: 6d66e5d0a1 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ウィンターくんさん» ウィンターくんさんいつもコメントありがとうございます！これからも頑張りますので、よろしくお願いします(^^) (2021年4月9日 22時) (レス) id: bcbdfee6f7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ゆゆこさん» ゆゆこさん、コメントありがとうございます。楽しみにして何度も読み直していただけたとのことで、とても嬉しいです（ ; ; ）これからはもうすこし更新頻度を上げたいと思ってます！これからもどうかふたりを見守っていてください！！ (2021年4月9日 22時) (レス) id: bcbdfee6f7 (このIDを非表示/違反報告)
ウィンターくん(プロフ) - 更新嬉しいです。ご無理なさらず、でもこっそり続きをお待ちしています。 (2021年4月2日 19時) (レス) id: 0f9ee489eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぶっく。
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作成日時：2020年8月10日 23時
