さいかいからあい ページ49
寒くなり始めた10月。今日もまたオフィスを訪ねることになった、2週間ぶりだ。今回のプロジェクトの仕上げのような会議で、あとはわたしの手を離れる予定なのできっとここに来るのは、今日で最後。
近くの自動販売機で冷たいブラックコーヒーを買って、ひとくち。背筋が伸びる。そういえば今日は拓朗くんもオフィスに行くと言ってたし、会えるかな。いや、仕事に行くから邪な気持ちなんてないけれど。心を落ち着かせるためにもうひとくち、缶コーヒーを飲む。
「__のAです」
いつも通り、インターホンを鳴らして挨拶をする。福良さんが出迎えてくれて、そのまま会議室に入る。
最後ということで、今回はあっさりと終わった。普段より時間も短かったし、方向性がしっかり決まって、確認作業も多かったので特に詰まる部分もなかった。
ありがとうございました、成功させましょう、そう笑い合って片付けを始める。
「あ、そういえば今日は川上と予定あるの」
タメ口でやわらかく声を掛けてくれる伊沢さん。約束をしているわけではないけれど、できることなら一緒に帰りたい。でも……といろいろ考えて返事ができないでいると、ここで待っててもいい と伝えてくれた。前にもこんなことがあった。
「A、帰ろ」
待たせてもらおうと、パソコンを開きかけたところで拓朗くんが呼びに来た。彼はすぐに帰れるようなのでわたしも手早く帰り支度を整える。
「伊沢さん、そういうことなのでお先失礼します。お気遣いありがとうございました」
ぺこりと頭を下げて、玄関に進む拓朗くんについていく。伊沢さんは優しく笑って見送ってくれた。
「お腹空いたー」
「ん、なに食いたい?」
なんてことないことを話しながら並んで駅に向かう。呼び名が変わったのも、隣が当たり前になったのも、つい2ヶ月前のはずなのに、ずっとこうしていた気がするから不思議だ。
再会の場である自動販売機を横切って、ふと、もうこの道は通らないんじゃないかと考える。QuizKnockさんとの話はとりあえず終わったから。
すこし寂しい気がしたけれど、よく考えたら別にどうだってよかった。始まりの場所は確かに重んじるべきかもしれないけれど、それよりも今隣にいる彼を見つめていたいから。
「なに笑っとるん」
彼を見てにやけていると、逸らされた。愛おしさが溢れ出してしまいそうだ。こんなに好きになれて、再会できて、出会えて、よかった。
「っふふ、好きだなあって」
さいかいから、あい。
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ぶっく。(プロフ) - カルボンさん» カルボンさん、コメントありがとうございます…!推しを書きたいように書いているのでそう言っていただけて嬉しいです!もっと楽しんでいただけるように頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。 (2020年3月13日 1時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - 川上さん推しの私、楽しく読ませて頂いております!私自身が長いお話を書くのが得意ではないので、ただただ尊敬です。。これからも更新楽しみにしていますね! (2020年3月12日 22時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ぷち。さん» ぷち。さんはじめまして、コメントありがとうございます!普段ぷち。さんの作品を楽しませていただいているのでコメントいただけてびっくりしました、とても嬉しいです…!頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2020年3月12日 20時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
ぷち。(プロフ) - コメント失礼します…!川上さんを始め、皆さんかっこよくてドキドキが止まらないです。最高に好きです。これからも更新頑張ってください、応援してます!! (2020年3月12日 15時) (レス) id: f3200af55f (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ひなたさん» ひなたさん、はじめまして。すごく嬉しいコメントありがとうございます(;_;)両片想いの行く末を楽しみにして頂けると嬉しいです、これからもよろしくお願いいたします! (2020年3月4日 15時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぶっく。 | 作成日時:2020年2月16日 19時