『再会から、愛。』 ページ48
店員さんのおかげで落ち着くことができた。照れた気持ちを抑え込んで、タイミングよく届いた料理への感想を口にする。
「……Aさん、」
すると川上先輩から、初めて下の名前で呼ばれた。さっきの発言ですらぐらついてしまいそうなほど、心が熱くなったというのに、その熱がぶり返してくる。
思わず彼の顔を見る。がっちりと目が合って、離せない。心の内を全て覗き込まれているような気がするほど、彼はわたしをじっと見つめてきた。……焦げてしまうかと思った。
「俺、ずっと、……Aさんのこと」
彼はそう言った直後、視線を落とした。心地よいような心臓に悪いような、緊張した沈黙が訪れる。わたしも彼の視線を追いかけて彼の手元を見ると、震えていた。目頭がぐっと熱くなる。わたしの手もまた、震えていた。
「……ず、っと、好き、です」
震える川上先輩の声を聞いた途端、成功した先に望んでいたものが見えた気がした。心が満たされていくというか、届けられた想いにソワソワしてしまうというか。
彼がこちらを見る気がしたので思わずふいと逸らす。
「うわ、なに泣いてるの」
「だっでぇ、急に、ずるいじゃないですか」
涙と汚くなった声を同時に出して、もう一度彼を見る。先程での真剣な顔から急に優しい笑顔に変わっていて、ドキドキする。
「っはは、Aさんおかしい」
シンプルに下の名前で呼んでくるし、涙は止まらないし、川上先輩への気持ちも急激に積もっていくし、どうしたらいいのかわからないほど、心の中がぐちゃぐちゃだった。
何もかもがこんがらがってはいたけれど、この複雑な感じ、ひとつに絞れない心情、悪くないなと思えるから不思議だ。
「……ひひ、わたしも川上先輩が好きです」
ぐちゃぐちゃなまま、それを吐き出した。すると川上先輩はさっきまで余裕そうに楽しそうに笑っていたのに急に目を見開いた。
泣くわたしをどんな目で見つめていたんだ、この人は。そう考えるとかっこよく見えていたはずの川上先輩が急に可愛らしく見えてきて、笑えてくる。彼が口を開いたけれど、声になるのを阻止するように話す。
「もう、っふふ、冷めちゃうんで食べましょう」
あんなに泣いちゃって、食べ終わったら化粧直ししなくちゃいけないな。そんなことを考えながら向かい側に座る、まだわたしの返事を飲み込めていない様子の彼を見つめる。
先程までは興奮しきって熱かった心がじんわりと温度を下げて、でも温まっていく感じが心地よい。
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ぶっく。(プロフ) - カルボンさん» カルボンさん、コメントありがとうございます…!推しを書きたいように書いているのでそう言っていただけて嬉しいです!もっと楽しんでいただけるように頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。 (2020年3月13日 1時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - 川上さん推しの私、楽しく読ませて頂いております!私自身が長いお話を書くのが得意ではないので、ただただ尊敬です。。これからも更新楽しみにしていますね! (2020年3月12日 22時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ぷち。さん» ぷち。さんはじめまして、コメントありがとうございます!普段ぷち。さんの作品を楽しませていただいているのでコメントいただけてびっくりしました、とても嬉しいです…!頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2020年3月12日 20時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
ぷち。(プロフ) - コメント失礼します…!川上さんを始め、皆さんかっこよくてドキドキが止まらないです。最高に好きです。これからも更新頑張ってください、応援してます!! (2020年3月12日 15時) (レス) id: f3200af55f (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ひなたさん» ひなたさん、はじめまして。すごく嬉しいコメントありがとうございます(;_;)両片想いの行く末を楽しみにして頂けると嬉しいです、これからもよろしくお願いいたします! (2020年3月4日 15時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぶっく。 | 作成日時:2020年2月16日 19時