愛。 ページ47
……しまった。
お前の好意はAちゃんに届ききってないぞ、と須貝さんにアドバイスを受けてから実は少しずつ頑張っていた。
まあそもそも、内に秘めているだけでも充分だったので、届ききっていないことに危機感も何も感じなかったんだけれど、須貝さんにそれじゃダメだ、的なことを何度も言われたから、仕方なく。
「川上先輩……?」
ほら、目の前の彼女も顔を赤くして不思議がっている。恋人だと間違われたことが嬉しいなんて伝えたからだ。そんなのもう、好きだと言っているようなものだろう。
どう切りかえそうと考えていると、タイミングがいいのか悪いのか、店員さんがそれぞれ料理を持ってきた。
「美味しそうですね」
さっきのことを気にしていないかのようにそう声を掛けてくれるけど、やっぱり、このまま曖昧にしちゃいけない。
塗り替える、塗り重ねるようなあの感覚、俺が恋だと蹴りをつけたあの感情。それらが心にどろりと、直接、流れ込んでくる感じがした。このまま溢れさせて、伝えてしまえば、なんだかそれでいい気がした。
「……Aさん、」
俺なりの、意思表示だった。逃げ道を潰すために、俺は呼んだことの無い彼女の名前を呼んだ。誤魔化して終わらないために、曖昧に閉まってしまわないように。
その違和感に、彼女もすぐに気が付いて俺の方をすっと見た。Aさんの目が、いつもに増して凄く綺麗に思える。
「俺、ずっと、……Aさんのこと」
溜めているつもりなんかない。どうしても、言えないのだ。こんなにも好きなのに、こんなにも伝えたいのに、あとは口から零すだけだというのに。なぜ、こんなに言えないんだろう、そう思って視線を落とすと手が震えているのが見えた。
……そうか、緊張してるのか。
そんな情けないこと言ってられない、彼女がこっちを見ている、俺の次の言葉を待っている。震える気もするけれど、声にするしかないんだ。手に力を入れてぎゅっと握る。
「……ず、っと、好き、です」
やっぱり震えてしまった。でも、言えた。確かにこの気持ちは彼女に届いた。その清々しさで視線を上に持ち上げて、Aさんを見る。
「うわ、なに泣いてるの」
だっでぇ、と涙を零しながら濁点のついた話し方をする彼女。……緊張してたのも、伝えられて清々しかったのも、全部吹き飛ぶ勢いで可愛らしくて、面白かった。
「っはは、Aさんおかしい」
真剣に好きだと伝えたのが全部嘘みたいで、やっぱり笑えてくる。
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ぶっく。(プロフ) - カルボンさん» カルボンさん、コメントありがとうございます…!推しを書きたいように書いているのでそう言っていただけて嬉しいです!もっと楽しんでいただけるように頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。 (2020年3月13日 1時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - 川上さん推しの私、楽しく読ませて頂いております!私自身が長いお話を書くのが得意ではないので、ただただ尊敬です。。これからも更新楽しみにしていますね! (2020年3月12日 22時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ぷち。さん» ぷち。さんはじめまして、コメントありがとうございます!普段ぷち。さんの作品を楽しませていただいているのでコメントいただけてびっくりしました、とても嬉しいです…!頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2020年3月12日 20時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
ぷち。(プロフ) - コメント失礼します…!川上さんを始め、皆さんかっこよくてドキドキが止まらないです。最高に好きです。これからも更新頑張ってください、応援してます!! (2020年3月12日 15時) (レス) id: f3200af55f (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ひなたさん» ひなたさん、はじめまして。すごく嬉しいコメントありがとうございます(;_;)両片想いの行く末を楽しみにして頂けると嬉しいです、これからもよろしくお願いいたします! (2020年3月4日 15時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぶっく。 | 作成日時:2020年2月16日 19時