【QlK】さいかいからあい【kwkm】〈完結〉

今日はデート、次もデート ページ44

最近の川上先輩は何かおかしい。甘いというか、優しすぎるというか、彼に対しての好きが溢れそうになるというか。


「……というか、そういう理論なら次はAさんが俺の行きたいとこ付き合ってね」

わたしの指先をぎゅっと握ってそう笑った顔。あの日わたしは一日ふわふわとしてしまって申し訳なかった。でも彼が悪い。普段は触れてくることも、あちらから誘うようなこともないのに。紛れもなくあの日が、わたしの夏休みの始まりだった。


宣言通り、次の約束は彼から取り付けてきた。ゲームセンターに行った日から1週間経ったか経っていないかくらい。彼とわたしが共通して好きな作家原作の映画を観に映画館へと出向いた。

あの日から好きの気持ちが抑えきれなくて、ふたりで映画館とかもはやデートじゃないか と1人でにやけていた。実は彼と映画館に行くのはこれが初めてではない、でも前はこんな気持ちじゃなかった。

頭に浮かべたデートという単語に浮かれていたわたしは服を買いに出掛けた。映画館デートなら、と可愛らしいワンピースを店員さんに勧められて、普段だったら苦笑いでやり過ごすところを試着室に入った。

着替えたわたしをべた褒めする店員さんにのせられてその可愛らしいワンピースを購入したし、まんまと映画館へ行くときに着ていった。

「っワンピース……か」

だから待ち合わせ場所で彼に会ったとき、感想こそ言われなかったものの普段との違いに気付いて声を漏らしてくれたのが嬉しかった。

「ワンピースです！似合ってます？」

調子に乗って感想まで欲するようにこう言ってしまった途端、軽い後悔に苛まれた。しかし、想像上の川上先輩がついたような悪態をつかれることはなかった。

「珍しい、似合ってると思う」
「映画デートならって勧められちゃって」

言わせたような気もするけど彼に言われるというのは、だいぶ嬉しいもので。言わなくていいことまで言ってしまう。

「……そっか、デートね、そのつもりでいこう」

川上先輩は優しく笑った。また、この感覚。心臓に悪い。好きだと認めているのにさらに痛めつけてくる、こんなに好きなのに、まだまだ好きになる余地があるらしい。わたしは彼の発言ひとつひとつで、舞い上がっていた。

「次のデートはAさんからね」

別れ際にそう笑う彼、ずるい。言い逃げするように、返事をする隙もないうちにふわっと手を振るから、それもずるい。次があることも、それをデートと呼ぶこともわたしには嬉しかった。

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