さようなら、トラウマ ページ40
「……俺に、謝って」
彼もわたしも何も言わないから、気まずい沈黙ばかりが流れた。それをゆっくり破ったのは彼だった。別に好きじゃないであろうわたしのことをじっと見つめて、……いや、こうなると彼が見つめているのがわたしかどうかも定かではない。
「今までの全部、謝って」
何を、とかそういうのを聞くのは野暮だと思った。もしかしたら、想像のつかないところでわたしが彼を傷つけていて、その話をしているのかもしれないけど、……でも、そうは思えなかった。
何に対して、とかではなく、リセットするために。
「__さん、ごめんなさい」
お互い、気持ちに蹴りをつけるために。
その日、わたしは彼のことを初めて名前で呼んだ。彼は驚いたように目を見開いていたけど、すぐにわたしと同じように頭を下げた。
「Aさん、ごめんなさい」
謝り合って、ふたりとも顔を上げる。こんなに簡単に済むわけないと、まだどこかで彼を疑っていた。今まであんなに怖がらせてきた人を、一回見せた優しさだけで信じ込むなんて到底無理だった。
「もう何もしないから、安心して」
「……っ本当、ですか」
普通なら頷いて終わるところを、確認をしてしまう。不安要素をできるだけ潰してこい、と須貝さんに言われたからだ。この先の話を晴れやかにするために、彼を信じきるためには、もう一押し、必要だった。
「連絡先消すとこ、見せるよ」
彼は少し悩んでそう言って、わたしの目の前でLINE、電話番号、メールアドレス、他抑えられていたSNSのアカウントのメモを消していった。正直、そこまでされていると思っていなかったので恐怖も感じたけど、でも、それを消すってことは。
「じゃあ、さようなら」
一方的にそう言って彼は去っていった。その直後、川上先輩と須貝さんがこちらに来てわたしを心配してくれた。無事、全てが終わったと胸を張って言えるだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
↓長編新作です。
【QlK】帰宅から出発まで【ymmt】
ymmtさんとの不思議な生活を書きます!ぜひ!
わたしたちらしいはじめかた→←わたしのことを好きじゃない彼と
390人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぶっく。(プロフ) - カルボンさん» カルボンさん、コメントありがとうございます…!推しを書きたいように書いているのでそう言っていただけて嬉しいです!もっと楽しんでいただけるように頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。 (2020年3月13日 1時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - 川上さん推しの私、楽しく読ませて頂いております!私自身が長いお話を書くのが得意ではないので、ただただ尊敬です。。これからも更新楽しみにしていますね! (2020年3月12日 22時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ぷち。さん» ぷち。さんはじめまして、コメントありがとうございます!普段ぷち。さんの作品を楽しませていただいているのでコメントいただけてびっくりしました、とても嬉しいです…!頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2020年3月12日 20時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
ぷち。(プロフ) - コメント失礼します…!川上さんを始め、皆さんかっこよくてドキドキが止まらないです。最高に好きです。これからも更新頑張ってください、応援してます!! (2020年3月12日 15時) (レス) id: f3200af55f (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ひなたさん» ひなたさん、はじめまして。すごく嬉しいコメントありがとうございます(;_;)両片想いの行く末を楽しみにして頂けると嬉しいです、これからもよろしくお願いいたします! (2020年3月4日 15時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぶっく。 | 作成日時:2020年2月16日 19時