【QlK】さいかいからあい【kwkm】〈完結〉

お互いにお互いしか見ていない ページ37

「……川上先輩から聞いたと思うんですけど、」

彼女が話すのはこの間の夜の話だった。間違えて非通知の電話に出てしまって、泣いて、川上を呼んで事情を話したって話。川上から聞いたこととそう変わらない内容だけど、何をもってたらしと感じたのだろう。

「その、わたしがあまりに泣くから、」

言いにくそうに視線を動かしている。続きを促すように彼女をじっと見て頷いてみるけど、やっぱり言い淀んでいる。

「だ、抱き締め、……てきたんですよ」

川上、結構やるじゃん。……というか、好きなの隠すつもりないのか？いや、きっと自然と体が動いたのか、もしくは色々頭で悩んでから行動にでたのだろう。どちらにしても、たぶんAちゃんと同じくらい気にしちゃってるんだろうな。

「そういうの慣れてるのかなって、思って」

それを聞いてつい笑ってしまう。彼女は真剣に悩んでるのに、とこちらを怖い顔で見てくるけど、俺の笑いは止まらない。川上が女の子に慣れていて、複数いる彼の周りの女の中のひとりかもしれないと感じているのだろうか。そんなわけないのに。

「はは、慣れてるかは俺にはわからないけど」

彼の気持ちを俺が言うのはダメだけど、これくらいの助言はいいだろう。

「Aちゃんのこと、しっかり見てるんじゃない？」

それは、根拠のない慰めや気休めじゃない。俺から見たってわかる嘘偽りのない事実。あいつはAちゃんのことしか見ていない。

「……元気出ました、ありがとうございます」

やわらかくてあたたかい笑顔で笑った。明後日の先、それがいつになるのかはわからないけどまじで時間の問題だろうな。成功の先を見るために、明後日の成功を確実にしなくては。

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