包み込む優しさの覚悟 ページ30
「あれ、Aさんのことだから、迷惑だとかあほらしいこと考えてんだと思ったけど」
そう言えば、彼女はほっとした表情を浮かべる。俺も安心して少し力が抜ける。すこし沈黙が流れ、俺は彼女をじっと見つめていたけれどAさんは下を向き始めた。また何か考え始めたんだろうな、と思ったけどどこかすっきりして見えたので顔を洗ってくるよう促す。
「あのさ、Aさんは話してすっきりしただけかもしれないけど、俺結構怒ってるんやけど」
自分でもなんでこう発言したのかわからない。フランクに話したかったというか、とりあえず普通に話をしようと思っていたのだ。こんな状況なのに元彼に嫉妬しそうになった自分に怒っていたのかもしれない。でも、俺がこう言ったことによってまた、彼女の顔がくもったのだ。
ああ、なんで俺こんな失敗を。元彼からの電話で怖くて不安で泣いていたのに、俺が不安そうな顔をさせてどうする。俺が怖がられるようなことをしてどうする。後悔で胸がいっぱいになる。
「……ごめん、やめとこ」
Aさんがぱっと顔を上げる。目が合うと、ふにゃ、と安心した顔に変わる。その顔にまた、ドキッとする。
「結構怒ってるのは事実だけど、今じゃなくていいな」
とにかく安心させるような言葉をかける。それはただの慰めじゃなくて、しっかり彼女と向き合って、本音をきちんと伝える、それに意味があるのだ。
「とにかく、もう大丈夫だから」
最初に出た言葉があまりにもふわっとしてて、自分でも言葉選び下手くそだな、と思った。伝えたいことを好意を隠しながら伝えるの、ってこんなに難しいのか。好きを滲ませないように、でもAさんを守る ということをしっかりわかってほしくて、できるだけ、温かく、包めるように、できるだけ。
「俺は、須貝さんもきっと、Aさんが大切だと思ってるし、ちゃんと守る覚悟もできてるから」
そう言った途端、彼女の目が細まる。そしてぱちぱちと瞬きをして目を逸らすように視線をあちこちに動かした。泣きそうなのを堪えているんだろうか、さっきあんなに泣いておいて、なにを我慢してるんだか。……ちょっと可愛らしいから、このまま見てようかな。自然と頬が緩む。
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ぶっく。(プロフ) - カルボンさん» カルボンさん、コメントありがとうございます…!推しを書きたいように書いているのでそう言っていただけて嬉しいです!もっと楽しんでいただけるように頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。 (2020年3月13日 1時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - 川上さん推しの私、楽しく読ませて頂いております!私自身が長いお話を書くのが得意ではないので、ただただ尊敬です。。これからも更新楽しみにしていますね! (2020年3月12日 22時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ぷち。さん» ぷち。さんはじめまして、コメントありがとうございます!普段ぷち。さんの作品を楽しませていただいているのでコメントいただけてびっくりしました、とても嬉しいです…!頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2020年3月12日 20時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
ぷち。(プロフ) - コメント失礼します…!川上さんを始め、皆さんかっこよくてドキドキが止まらないです。最高に好きです。これからも更新頑張ってください、応援してます!! (2020年3月12日 15時) (レス) id: f3200af55f (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ひなたさん» ひなたさん、はじめまして。すごく嬉しいコメントありがとうございます(;_;)両片想いの行く末を楽しみにして頂けると嬉しいです、これからもよろしくお願いいたします! (2020年3月4日 15時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぶっく。 | 作成日時:2020年2月16日 19時