【QlK】さいかいからあい【kwkm】〈完結〉

『愛から再開』 ページ28

正直なところ、この感覚につける名前は知らないが、何からくるものなのかは察しがついている。でもそれを認めてしまったら、いまの俺の行為すら、善意ではなくそれからきてしまっていることになる気がして。

厚意は寄せていても、好意を寄せているつもりはなかった。でも、俺はこの膨らみきった気持ちを、好き 以外で説明できる気がしない。しかし、認めてしまったら今までの自分が堪えてきたものがダメになる気がした。

ただ俺を慕ってくれているAさんのことをそういう目で見てる、っていう事実だけでいけないことのような気がして。どうにもこの気持ちに目を背けたくなる。愛しいと思うことは決して悪いことじゃない。それでも俺は、俺を信頼して俺の腕の中で泣いている子に対して、失礼な気がしてしまう。

Aさんについてこんなに考えている時点で、俺の気持ちなんて自明だけど。


図書館で俺のメモを拾ってくれたとき、優しい子だと思った。カフェで再会したとき、話さなきゃ後悔すると思った。そのあと何回も会って、もっと一緒にいたくなった。離れて、苦しくなった。

自動販売機の前にいる彼女を見て、思わず話しかけた。オフィスで須貝さんと笑う姿を見て、ちょっと寂しかった。須貝さんに できるだけ近くにいてあげて と言われて、彼と付き合ってないことに少し安心した。

パスタを食べながらさりげなく言われた好きに、緊張した。伊沢さんと仲良さげに話しているのを見て、また少し寂しかった。帰り道に俺のことを話していたと聞いて、顔が熱くなった。俺と同じくらい赤い顔をしたAさんと、もっとそばにいたいと思った。

夜中にLINEがきて、ドキッとした。言葉にできないくらい心配して、焦って、彼女とやっと対面したと思えば泣き始めて、思わず抱きしめた。抱きしめてからずっと、いや、その前からずっとAさんのことを考えている。


俺はAさんが、どうにも好きみたいだ。


彼女が俺の脳内の一角に長いこと居座っているのは、故郷の同輩を思うような気持ちからではなく、大層だと鼻で笑った恋だったのだ。

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