馴染んで重ねたら解けそう ページ27
ちょうど、Aさんのこと、というか須貝さんの言葉の真意を考えていたところに連絡がきた。夜中にLINEが来ることも珍しかったし、彼女にしては落ち着いた様子というか、どこか真面目で気になった。
須貝さんから言われた「できるだけ近くにいてあげて」について考えていたこともあり、俺もすぐに 電話をする か 会いに行く かの2択を提示できた。それは正解だったらしく、会いに行くことになった。やっぱり様子がおかしいので、できるだけはやくそばに行かないと、そう思って身支度を整えて財布とスマホだけ持って家を出た。飛び出たというのが正しいかもしれない。
体力なんてないのに彼女の家の最寄り駅から家の前ま走った。電話を繋ぎながら行ったほうがよかったか、とかいろいろ考えながらも、とにかく走った。気が気じゃないというか、胸騒ぎがするというか、とにかくはやくそばにいかなきゃ、って。
少し息を整えてインターホンを鳴らす。迎え入れてくれた彼女の目元や鼻は赤くて、泣いたあとだとすぐわかる。なにがあったのか聞こうとしたところで、大粒の涙を流し始めた。
「ちょ、ええ、とりあえず中入ろ」
正直、めちゃくちゃ慌てたし、女の子の扱い慣れてないんだよなあ、と申し訳なくなった。慣れてないなりに、Aさんのこと、しっかり考えて対応しよう。彼女の両肩を後ろからそっと支えてリビングの方へ連れていった。久しぶりに立ち入った彼女の家は、前に来たときよりもすこし落ち着いた雰囲気になっていた。
リビングに着くなり、彼女は膝から崩れ落ちるように泣いた。声を掛けるのは野暮な気がするし、だからといってそのままにしておくと、倒れてしまいそうで、支えるだけだ、と自分に言い訳をしながら彼女をふわっと抱き締めた。
俺の腕に納まった彼女は、やっぱり小さくて、震えていて、いつもの明るい彼女の影もなかった。彼女に悩みがないと思っていたわけではないけれど、やっぱりこうなるくらいのものを抱えていたとなるとすこし意外だった。
こんなに泣くくらいになるまで気付けなかったのも悔しいけど、気付かれないように強い彼女は工夫していたんだろう。
彼女の温もりが自分の腕の中に馴染んでいくたび、また、あの不思議な塗り重ねるような感覚が訪れる。彼女が泣き止むまでは、落ち着くまでは、あの感覚について考えてもいいかもしれない。……そろそろ、蹴りをつけるべきなんだ。
390人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぶっく。(プロフ) - カルボンさん» カルボンさん、コメントありがとうございます…!推しを書きたいように書いているのでそう言っていただけて嬉しいです!もっと楽しんでいただけるように頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。 (2020年3月13日 1時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - 川上さん推しの私、楽しく読ませて頂いております!私自身が長いお話を書くのが得意ではないので、ただただ尊敬です。。これからも更新楽しみにしていますね! (2020年3月12日 22時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ぷち。さん» ぷち。さんはじめまして、コメントありがとうございます!普段ぷち。さんの作品を楽しませていただいているのでコメントいただけてびっくりしました、とても嬉しいです…!頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2020年3月12日 20時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
ぷち。(プロフ) - コメント失礼します…!川上さんを始め、皆さんかっこよくてドキドキが止まらないです。最高に好きです。これからも更新頑張ってください、応援してます!! (2020年3月12日 15時) (レス) id: f3200af55f (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ひなたさん» ひなたさん、はじめまして。すごく嬉しいコメントありがとうございます(;_;)両片想いの行く末を楽しみにして頂けると嬉しいです、これからもよろしくお願いいたします! (2020年3月4日 15時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぶっく。 | 作成日時:2020年2月16日 19時