【QlK】さいかいからあい【kwkm】〈完結〉

楽しいとこだけ味わいたい ページ26

「……ごめん、やめとこ」

何を言われるのかと顔を上げられないでいると、川上先輩がそう笑った。構えていただけに、びっくりして顔を上げる。目が合った川上先輩は優しい顔をしていて、不安がぺしゃんこにしぼんだのがわかった。

「結構怒ってるのは事実だけど、今じゃなくていいな」

その言葉を始めに、いろいろと慰めの言葉をかけてくれた。わたしの傷ついた心を癒すように、そしてあの人のことを忘れられるようにありったけの優しい言葉をかけてもらって、わたしはだいぶ冷静さを取り戻した。

…そう、冷静さを取り戻したら、何から何まで恥ずかしいことに気が付いた。片想いしてる相手を夜中に呼び出して元彼の話でギャン泣きする、ってかなりめんどくさい女じゃない？

泣き腫らした顔も晒してしまったし、かなり、かなりだめだ。抱き締められたことも思い出しかけて、記憶がしっかり繋がる前にやめた。いま、思い出したら絶対顔に出る。だめだ。

「なんて顔してんの、もう元気なの？」
「ひひ、はい、元気です！でも説教は後日でお願いします！」

いろいろ考えていろいろ堪えていると、それらが顔に出ていたらしい。これ以上恥ずかしいことが起きないように気を引き締めつつ、普段のテンションで返事をした。

「そんなに鬼じゃないって」
「でもさっきめちゃくちゃ怖かったです」
「女の子の扱いの下手くそすぎたなって、ちょっと反省したからもう許して」

普段のテンポですすむ会話、の中に潜んだ川上先輩のわたしを女の子として捉えている発言に、頬が緩みそうだった。しかも女の子の扱い下手くそなの、ちょっと嬉しい。慣れてたら複雑だし。

……これ以上考えたら、さっき思い出さないように努力したことまで浮かんできそうで、むりやり押し込める。明日の昼間とかに思い出して1人でニヤケとこう、ひひ、たのしみだなあ。

恋はめんどくさいと思っていたけど、やっぱり楽しい側面もたくさんある。……電話をかけてきたあの男との一連のあれは恋として数えないでおこう。そうだ、電話のこと、それに川上先輩のこともあとで須貝さんに報告しておかなきゃ。

馴染んで重ねたら解けそう→←縮む不安、膨らむ不安

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