縮む不安、膨らむ不安 ページ25
川上先輩はわたしの体をそっと離して、目の前で頷きながら話を聞いてくれた。わたしの記憶の中のどの彼よりも優しくて、やわらかくて、温かい表情で、詰まりながらも安心して話しきることができた。変に口を挟まず、でも適度に促しながら聞いてくれたおかげだろう。
「……大丈夫だと、思ってたんです」
そう言うと、彼は眉を下げてすこしだけ口角をあげた。こんなに泣いて、川上先輩にも迷惑をかけているのに大丈夫なんて、なんでそんなこと。大丈夫なわけない、あのときの強がりにはなんの意味もない。
「迷惑とか思ってないから」
「え?」
自分の思考が口から飛び出てしまっていたのかと思ったけれど、そうではないらしい。彼は先程よりも優しく笑って口を開いた。
「あれ、Aさんのことだから、迷惑だとかあほらしいこと考えてんだと思ったけど」
……ああ、川上先輩には敵わない。彼に全部を話したおかげか、彼が優しく笑ってくれたおかげか、わたしの中の不安は随分小さくなっていた。
川上先輩は、わたしの話を聞いてどう思っただろう、めんどくさいって思われたかな。さっきまでは、自分のことしか気にしていられなかったのに、ほかのことを考える余裕も出てきてしまった。迷惑じゃないと言ってくれた彼がそんなふうに思うわけないってわかっているのに、泣き疲れた頭ではネガティブな想像しかできなかった。
「あのさ、Aさんは話してすっきりしただけかもしれないけど、俺結構怒ってるんやけど」
わたしが軽く復活したのを察したのか、川上先輩は とりあえず顔洗ってきて とわたしを洗面所の方へ押し込めてから、怖いことを言った。もしかしてこれ、呆れられた?さっき縮んだはずの不安がまたわたしを支配する。
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ぶっく。(プロフ) - カルボンさん» カルボンさん、コメントありがとうございます…!推しを書きたいように書いているのでそう言っていただけて嬉しいです!もっと楽しんでいただけるように頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。 (2020年3月13日 1時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - 川上さん推しの私、楽しく読ませて頂いております!私自身が長いお話を書くのが得意ではないので、ただただ尊敬です。。これからも更新楽しみにしていますね! (2020年3月12日 22時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ぷち。さん» ぷち。さんはじめまして、コメントありがとうございます!普段ぷち。さんの作品を楽しませていただいているのでコメントいただけてびっくりしました、とても嬉しいです…!頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2020年3月12日 20時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
ぷち。(プロフ) - コメント失礼します…!川上さんを始め、皆さんかっこよくてドキドキが止まらないです。最高に好きです。これからも更新頑張ってください、応援してます!! (2020年3月12日 15時) (レス) id: f3200af55f (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ひなたさん» ひなたさん、はじめまして。すごく嬉しいコメントありがとうございます(;_;)両片想いの行く末を楽しみにして頂けると嬉しいです、これからもよろしくお願いいたします! (2020年3月4日 15時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぶっく。 | 作成日時:2020年2月16日 19時