【QlK】さいかいからあい【kwkm】〈完結〉

自分の機嫌すらとれない大人は ページ23

好きだと認めてしまった以上、普通に話すのが難しくなった。今までは自分からLINEを送って積極的に会えていたのに、最近ではそれもできない。川上先輩からLINEが届いても、妙に一歩下がったような対応をしてしまう。

自分がこんなにめんどくさいとは思わなかった。恋が、こんなにめんどくさいとは思ってなかった。

「やっと出てくれた」

ぼーっと考え込んでいたため、普段は絶対出ない非通知でかかってきた電話に出てしまった。耳元で嫌に低い声が響いてから気が付いた。聞きたくない声、聞くつもりのなかった声に思わずスマホを落としてしまう。

…この間、須貝さんに聞かれたときは大丈夫だなんて強がったけど、そんなの気の所為だったんだ。なにが大丈夫だ、手の震えが治まらなくて、スマホを手にすることも、電話を切ることもできない。声だって、さっきから出そうとしているのにかすれてしまってまともに出ない。

慌てているうちに電話先の声は大きくなるし、わたしは耳を塞ぐようにしてできるだけ落としたスマホから遠ざかることしかできなかった。

しばらく蹲っていると、電話の切れる音がした。無視すれば大丈夫だと思っていたけれど、こんなに怖いなら非通知からかけられないようにしっかり設定しておかないと。

すっかり静かになったスマホを手に取って、冷静にそう考えられるようになってから、急に血の気が引くような感覚が押し寄せる。わたしにとってあの人は今も怖いままなんだ、と再確認させられた気がした。同時にそれが終わったことへの安心で涙が出てきた。さっきまで泣いていなかったのが不思議なくらいに大粒の涙が流れてくる。

いくら泣いても不安な気持ちが消しきれず、誰かに聞いてほしいけれど、こんな夜中にLINEできる相手なんていない。正確に言うと、最近LINEを送るのにすこし躊躇いが出てしまう彼しか浮かばない。彼にだって、そんな易々と迷惑はかけられないし、内容が内容だし。

明日まで待つ余裕があるのなら、須貝さんに相談する気にもなるのだろうけど、いまの不安を消さなきゃ、そんな余裕は出ない。自分の機嫌は自分でとるのが大人だとよく聞くけれど、そんなのあまりに窮屈じゃないか。

こんなふうに屁理屈を捏ねても意味が無いことなんてわかっているけれど、

『川上先輩、いまいいですか』

わたしは、勢い任せにそう送ってしまった。

泣いても泣いても、泣いても→←それが特別な意味になっていく

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す