“も” ページ18
「最近っていうか、ずっと緑なわけじゃないんだなって思って、ひひ」
そうやっていたずらっ子のように笑うので、俺が嫌がってるの分かってて言ってんだな と察しがつく。そっちがその気なら、と俺は彼女を無視してフォークをぎゅっと握り直してパスタを絡めとる。美味い。
「え、ばかにしてるわけじゃないですよ、わたしは緑頭の川上先輩もすきです」
焦ったように彼女が言ったことは、俺の髪が緑色であることに触れた時よりも数倍大きい爆弾となって俺に届いた。
その後は適当に会話を切り上げて、話題を変えた。お互いの近況なんかを話しながら2人ともパスタを平らげて、よし、と席を立つ。久しぶりなんだから奢るよ、と言ってもAさんはやっぱり譲らなかった。
何度も遊びに行く仲なのに特別なことがあるわけじゃないときに奢りあったりすると、貸しとか借りとか面倒くさくなるからやめよう、とは言っていたけど、今日なんかは例外の特別な日に入ると思った。久しぶりにわざわざ一緒にご飯を食べに来たわけだし。
「なんか今から仕事って感じしないですね、楽しすぎた」
オフィスに向かう途中、丁度再会した自販機を通り過ぎるあたりで彼女は笑いかけてくる。…やっぱり、あのなんとも言えない感覚は続いている。塗り替えるとか大切に思うだとか、頭にふわりと浮かんではくるんだけどそれをうまくまとめられない。
いつか見つければいいと思っていたけど、それじゃ、これ感じる度にこうやって思い悩む羽目になる。ひとつの正解を求めたくなる俺の癖が悪い方向に出たのだろう。こうなってくると、かちっと当てはまる表現が見つかるのはずっと遠い未来かもしれない。
この悩みは解けない方がいいのかも、という謎の感情までわいてきた。どうしてそう思うのか、俺にもわからなくて。モヤモヤが強まるのが苦しくて、むりやり頭の外にこの議題を投げた。またいつか考える羽目になるだろうけど、一旦。
「__のAです」
あの日のように、インターホンの向こうの彼らへAさんがそう言う。ここには俺も彼女も働きに来ている。数時間後、ふくらさん伊沢さんAさんの会議が終わるまで、俺はわざとこの日まで残した仕事のことだけを考えなくては。
…そうわかっているつもりなのだが、デスクについてからも、緑頭の川上先輩“も”好きだと笑った彼女が頭から離れなかった。
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ぶっく。(プロフ) - カルボンさん» カルボンさん、コメントありがとうございます…!推しを書きたいように書いているのでそう言っていただけて嬉しいです!もっと楽しんでいただけるように頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。 (2020年3月13日 1時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - 川上さん推しの私、楽しく読ませて頂いております!私自身が長いお話を書くのが得意ではないので、ただただ尊敬です。。これからも更新楽しみにしていますね! (2020年3月12日 22時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ぷち。さん» ぷち。さんはじめまして、コメントありがとうございます!普段ぷち。さんの作品を楽しませていただいているのでコメントいただけてびっくりしました、とても嬉しいです…!頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2020年3月12日 20時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
ぷち。(プロフ) - コメント失礼します…!川上さんを始め、皆さんかっこよくてドキドキが止まらないです。最高に好きです。これからも更新頑張ってください、応援してます!! (2020年3月12日 15時) (レス) id: f3200af55f (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ひなたさん» ひなたさん、はじめまして。すごく嬉しいコメントありがとうございます(;_;)両片想いの行く末を楽しみにして頂けると嬉しいです、これからもよろしくお願いいたします! (2020年3月4日 15時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぶっく。 | 作成日時:2020年2月16日 19時