【QlK】さいかいからあい【kwkm】〈完結〉

彼が元になった所以 ページ12

そんなもんだったんだね、と意外にも彼はすぐに引き下がったらしい。俺と別れたことを後悔させてやる、とでも言いたげな目が怖かったけど、と無事別れたことを俺に電話で報告してきた。

「…俺さ、彼女のことまだ諦めきれない」

2人が別れてから、そう元彼の方から相談を受けたのは結構すぐだった。こんなことするような人間になった覚えはないのに、と彼女との写真や彼女がSNSにあげていたような写真、隠し撮りに見える写真までまとめあげたフォルダを見せられた。

彼女が好きすぎて、すこし彼の中の完璧が乱されたらしい。乱すだけ乱して、去っていった彼女のことがどうにも憎くて、でも好きで、そんな気持ちだと言われて、こいつはすごく不器用なだけなのかと思ってしまいそうだった。

『たすけて、』

AちゃんからそうLINEがくるときまでは。どこにいるのか何とか聞き出すと東大図書館で、そう遠くないところにいた俺は全力で走ってそこまで向かった。どう考えてもあいつの仕業だろう。

ほの暗い廊下を駆け抜けると、必死に彼女に話しかける彼がいた。物理的に手を出しているわけじゃなさそうだということにはほっとしたが、どうにも穏やかじゃなさそうだ。

いくら急いで来たからと言って彼女のLINEから俺が駆けつけるまで10分はかかった、それなのに多分状況は変わっていない。つまり、10分以上彼はAちゃんに独り善がりの希望論を、完璧を押し付けて話している。

「やめなよそういうの」

思わず眉が下がるけど、なんとか笑いかける。そのあと元彼は俺らが付き合ってるんじゃないか、とか疑いをかけてきたりひとしきり怒って去っていった。

それからしばらくは落ち着いていたのだが、1週間に1度のペースでなにかをしてくる。別れてからもう1年も経つのに、相変わらず、鬼のように電話をかけてきたり、SNSでDMを送り付けてきたり、時には直接押し掛けたり。

彼もそんなことしていても意味が無いのは気付いているはずなのに、取り憑かれたように続ける。少しでも言い返せば、ごめんな ってあの日のように諦める。今はもう、彼と研究で関わるようなことは無いが、なにがしたかったのか、今になってもわからない。

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