. ページ11
デートでも何でもないただの待ち合わせ。
仕事終わりの魅力ゼロの身だしなみに、少しだけ頑張ったマスカラは徐々にカールが落ちつつある眠たげな瞳。
こんな私を見つけてくれるアイドル様がいるという事実をまだ信じることが出来ず、半信半疑のまま待ち合わせの場所で足を止めた。
段々と寒くなってきた夜風に当たり、指先が冷えてくる。
こんな夢の事なんか信じるべきではないのかもしれない。
ジャケットのポケットに手を突っ込み、目の前のバス停の椅子に腰掛けた。
夜空を見上げると無数の星が輝いているが
その綺麗さを感じれば、私は今何をしているのだろうと馬鹿馬鹿しくなった。
２つほどバスを見送り、時間はとっくに夜となっているが
彼はまだ現れない。
いや、まだ現れないのではなくて
きっと現れることのない存在なのだ。
夢は夢。私の想像、そして妄想の世界で繰り広げられた甘く幸せな夢だ。
現実は痛いほどに冷たい。
そんな事、言われなくても分かっていたはずなのに…
ここまで出向いてしまった自分が情けなく、じんわりと目元が見えづらくなっていく。
もうすぐ3本目のバスが来る。
それに、こんなところにずっといるわけにもいかない。
隣にはきっと次のバスに乗るであろう人が腰を掛けて座り出した事だし、頭を冷やしながら帰ろうと白い息を吐いた。
"初めまして"
隣から声がした。
いつも聞いてきた柔らかい声色で、誰だか分かってしまうほどに覚えている声だ。
隣に座る男性は、帽子とマスクを取り
私を見つめてこう言うのだ。
JN「…初めまして、」
「…ジェノ」
始まってしまった時を戻す事はできない。
現実世界はそう簡単ではないのだ。
私達がここで出会ってしまった以上、楽しかった思い出…で終わる事は出来ないのだと思う。
本物か確かめたくて、触れてしまったその頬は
夢では感じることの出来なかった温もりが指に伝わった。
形があることが嬉しくて、涙が出そうになったのは内緒だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 479人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
pkpk(プロフ) - ぱるむむさん» ぱるむむさん、こんにちは☺️ 嬉しいお言葉ありがとうございます✨ 緩やかな更新ではありますが、最後までお楽しみいただければと思います💕🙇 (1月16日 15時) (
レス) id: 2aba72ea6d (このIDを非表示/違反報告)
ぱるむむ(プロフ) - こんにちは(^^)このお話とても面白くて大好きです！これからも更新楽しみにしてます♡ (1月16日 14時) (レス) @page10 id: 0ab191d9fd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：pkpk
| 作成日時：2023年12月31日 22時
