page.4 ページ4
.
それから俺は、あのカフェに足を運ばなくなった。顔を認識されてしまっては、もうこっそり近寄ることは難しい。きっと彼にとっては、あんな一瞬のやり取り記憶にもないだろうけれど。
ただそれよりも、気づいてしまったどうしようもないこの感情を早く忘れなければいけないと思ったんだ。
学部も違う、建屋も違う…そもそもこの三年間で一度も会わなかった。俺があそこに近づかなければもう会うことはない。
そう思っていたのに……、
「あれ？あの時の、」
コンビニのレジで会計を済ませ振り返ると、丁度友達を引き連れて入って来た�睫擇判于颪靴討靴泙辰拭�そうだ、ここも彼のテリトリーだ。
また返事も出来ず固まっていると、�睫擇聾斥佞鯊海韻拭�
「またビターチョコ買いに来たの？」
そう笑った彼に、咄嗟に持っていた袋を後ろ手に隠す。
「いや…あの……、ごめんなさい！」
バッと頭を下げ、そのまま彼の顔も見ずにコンビニを飛び出した。
「はぁーーー」
大きなため息が、タイトルだけ書かれた真っ白な原稿用紙に掛かる。
学校がない日は、こうやってカウンターに座り家業である古書店の仕事を手伝っている。と言ってもほとんど客が来ることはなく、趣味である小説の執筆をすることがほとんどだった。
今回はタイムスリップものにしようとタイトルを書き込んだものの、書いては消し、消しては書いて、また消して、灰色にくすんでいくだけの原稿用紙をグシャグシャと丸める。
また新しい用紙にタイトルを書いても、出るのはアイデアではなくため息ばかりだった。
もちろん、そのため息の理由は文章が浮かばないからだけではない。むしろメインの理由をかき消すために執筆を始めたようなものだ。
原稿用紙から視線を外すと視界に入って来る、あの日のビターチョコレート。あれから減ることもなく、ポツンと机の傍らに置かれているだけ。
食べられないのなら捨ててしまえばいのだけれど、コイツには何の罪もない。悪いのは、あの時嘘をつき、さらに訂正するチャンスがあったのにも関わらず逃げ帰ってしまった自分だから。
「もう大学行きたくねぇなぁ、」
もう授業もほぼないし、卒論はどうにか家で進めれば…。
また大きなため息をつき、机に突っ伏した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 224人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
木曜は雨(プロフ) - nokkochanmokeedanoさん» コメントありがとうございます！モジモジ…笑。そう言っていただけて嬉しいです(^-^)またよろしくお願いします⭐︎ (2022年9月23日 21時) (
レス) id: 31e16ece45 (このIDを非表示/違反報告)
nokkochanmokeedano(プロフ) - この小説は…たかいの担の夢と理想です！(๑•̀ㅂ•́)و✧何度読んでもヘラヘラモジモジしてしまうほど顔が緩みます(*´﹃｀*)素敵な作品をありがとうございます。また、楽しみにしていますねぇ(*´ｪ`*) (2022年9月22日 22時) (レス) id: 3329f2b1c1 (このIDを非表示/違反報告)
木曜は雨(プロフ) - うさこさん» コメントありがとうございます！たかいののMV観たいですね(*^_^*)もしろんハピエンで♡ (2022年9月15日 23時) (レス) id: 31e16ece45 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - こんばんわ。ビターチョコレートのMV見ていて何でいのちゃんだけ…しかも女と💢だからちゃんと見てないですし、これからも見る気は、ないです。だからたかいので良かった。何ならMVもたかいので別れずに😅素敵なお話ありがとうございました。 (2022年9月12日 2時) (レス) @page23 id: f4957992c9 (このIDを非表示/違反報告)
木曜は雨(プロフ) - haruboo33さん» たかいのだとやはりハッピーエンドになってしまいますね♡(手が勝手に) (2022年9月10日 7時) (レス) id: 31e16ece45 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：木曜は雨
| 作成日時：2022年8月29日 8時
