プリマ旦那河野と遣らずの雨�� ページ29
ーﾎﾟﾂ…ﾎﾟﾂ…
『あ』
河野｢雨や｣
天気予報では何も言わんかったのに。
小さな水滴がポツポツ落ちてきて、それは段々量と共に激しさを増す。
河野｢ヤバイ！Aさん雨宿りしましょ！｣
『そ、そうね！あそこの屋根があるとこ行こ！』
丁度近くに屋根のある古い居酒屋みたいな建物が目に入り、俺とAさんは慌てて建物に入ってって激しい雨から逃れた。
『すごい降り方…』
河野｢恐らく通り雨ですね。大雨やけど長くは降らないですよ｣
『…公演に間に合えばえぇけど』
河野｢そうっすね｣
降り出して5分も経ってないのに既に道のあちこちに水溜まりが出来てる。
こりゃ降り止むまで出られんな。傘も持ってへんし。
『河野くん、チョコの袋ずっと持っとくん辛くない？』
河野｢全然ですよ。これくらい何ともないです｣
『ほんま？大丈夫？』
河野｢大丈夫ですって。そんな顔せんといて下さいよ！｣
心配そうなAさんは渋々という感じで『しんどなったら遠慮せんと言うてな？』と言うてくれた。
河野｢…｣
========
10年前。2月14日。
当時、俺と野村は芸人としてまだまだ下っ端で大勢の先輩に面倒見て貰いながら細々と活動していた。
2年先輩のAさんも俺らを可愛がってくれた一人で、優しくて可愛い彼女に俺は密かに惹かれていた。
『河野くん、重くない？』
河野｢平気です。これくらい何ともないですよ｣
『しんどなったら遠慮せんと言うてな？』
河野｢はい｣
Aさんが楽屋におった俺ら後輩に飲み物を奢ってくれることになり、買い出しに行くと言うので｢誰がAさんに付き添って荷物持ちをするか｣と皆で軽い争いをして見事その権利を獲得した俺。
荷物持ちとしての同伴とは言え、想いを寄せる先輩と二人並んで街を歩いてるということにとてつもない優越感に浸っていた。
ーﾎﾟﾂ…ﾎﾟﾂ…
『あ』
河野｢雨が｣
のんびり二人で劇場へ帰っている最中に突然の雨。
傘どころか雨を凌げるモノなんて俺もAさんも持ってなかったので、仕方なく近くの建物で雨宿りすることになった。
『すごい降り方やね』
河野｢多分通り雨ですね｣
『傘も持ってへんし、公演に間に合えばえぇけど…』
河野｢そうですね｣
遠い昔のことやのに、その時のAさんとの会話を俺は一字一句覚えてる。
まさか10年越しに似たようなシチュエーションに似たような会話をするなんて。
プリマ旦那河野と遣らずの雨��→←プリマ旦那河野と遣らずの雨��
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 37人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まる - 作品を作る前にルールをしっかりご確認下さい。オリジナルフラグをちゃんと外して下さい、違反行為です。外し忘れ、とかいう軽い意識はおやめ下さい。作品を消されても仕方のない行為です。オリジナルの新着に二次創作が上がってくる事を不快に感じる人もいます (2019年1月3日 21時) (
レス) id: cec6dd7646 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：コッティ | 作成日時：2019年1月3日 21時
