五欠片- ページ6
そうだ。確か彼だ。
そんないつの話かもわからない昔の思い出を頼りに手繰り寄せたもの。
私は彼に、シャオロンにもう一度会うという約束を果たすために。もう一度「また」を繰り返すためにここにきたのだ。
とはいえ結局はあの時間を操る「時間の館」という廃墟のおかげだとは思うけど。その人にとって大切な時間を与えてくれる場所、か。今はもう、存在しないけど。
けれどこれは、何か偶然ではなく、必然のように感じていた。
口から飛び出る花を見て、この片思いとやらは、どうやら彼に対してか。と確信する。なんだったかな、そうだ、
「『ダイヤモンドリリー。』」
『へ?』
sha「よぉ。久しぶりやな!!Aっ!!」
嗚呼、なるほど。ぶわっと顔に熱が集まる。心がぎゅーっと締め付けられるように苦しくて、でもとても暖かくて、嬉しくて高揚する気持ちに整理をつけられない。
これが恋なのか。
『ずっと会いたかった。「また」を叶えるために。』
sha「ん、待っとったで。」
『忘れてたくせに。』
sha「なんとなく、Aが来て、あ、やっぱりって思ってん。」
『またね、って言ったのは一体どこの誰?』
sha「正確には「また明日」やけどな。」
『しーらない。せっかく来てあげたんだからまず喜んで欲しいんだけど。』
もう、お互いに好きだなんて分かりきっていた。
「告白」なんて、わざわざ小っ恥ずかしく「好き」なんて伝える文化があるところが存在するらしい。まぁ、素直な恋や愛をする姿は少しばかり尊敬するけど。
『その人にとって、大切な時間。』
sha「?」
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作者名:noroma±睡魔 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Chihiro0521/
作成日時:2022年8月12日 18時