?欠片- ページ1
「はぁ…。」
国一番の大きな図書館のたった一つの本棚の前で同じ本の同じページを開いてはため息をつく。という奇妙な行動をとる少女がいた。小さな背の少女は再び同じ本に視線を落とした。
『正直、心当たりがない…。』
照れ隠しとかではなく本当に。また、手元に収まっている本のあるページを開く。同じことを一体何度繰り返しただろうか。もしかしたら、文字化けて、見た内容が変わっているかもしれない、なんていう淡い期待があったのかもしれない。しかしそんな不可思議なことは起こるわけなく、文字たちは無機質に現実を突きつけてきた。
『花吐き病…か。』
聞いたこともない病名だった。なんというか、病院に行ったら精神科とか勧められそうな。実際内容もそうだった。「片想いを拗らせると口から歯を吐き出すようになる。その花に接触すると感染する。両思いになると白銀の百合を吐き出して完治する。」ゆびでなぞりながらゆっくりと考える。普段なら気に求めず馬鹿だなんて笑って無視していたかもしれない。けれど、いきなり自分の口から花が出るようになって、喉が痛くなってきて。流石に信じざるを得なかった。
『でも私、好きな人、いないんよなぁ…。』
それは、“人に興味を持つことができない”私に撮って完治不可能と叩きつけられたようなものだった。
しかしそこにある疑問が浮かんだ。
『あれ、じゃあなんで私、花吐き病なんか…。』
花吐き病は、「片想いを拗らせると発症する」のだ。つまり私は既に恋をしている状態。
誰に…?いつ…?
花吐き病は、片想いを拗らせていても、発症するのがいつ、とかはさまざまで、ならない場合もザラにある。
ふと、ある思い出が、まるで時を巻き戻して刻み直すように、ゆっくりと脳を旋回し始めた。
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作者名:noroma±睡魔 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Chihiro0521/
作成日時:2022年8月12日 18時