第２６話 倒れる後輩と真剣な先輩。 ページ9
そして数分後。
「…先輩…？」
月子ちゃんはようやく目を覚ました。
「良かった〜！ ほんと一瞬ビックリしたよ〜」
「先輩？」
「月子ちゃん、急に倒れちゃって… でも、ただの貧血だって病院の先生が言ってた」
「あ、そうでした。私…… でも、何で先輩と私、二人っきりなんですか？ しかも、こんな人通りのなさそうなところにあるソファーで」
「ああ、病室のベッドでもよかったけれど、空いている部屋がなくてね？ だから…」
「つまり先輩は、人のいないこんなソファーのある場所で、私にあんなことやこんなことをしようと？」
え？
あんなことこんなことって、何でそう結びつくの？
「いやいや、いくら君に変態と言われ続けている僕でも、さすがにこんな時には…」
「私にそうは思われたくないと、こんな時に言い訳ですか。まったく、先輩はいつになっても変…」
「もうやめてよ、そういうの！」
月子ちゃんの言葉にそろそろ怒れてきた僕は、つい言ってしまった。
でも…
「何に付けても変態呼ばわりって酷くない！？ 何せ僕は君より先輩だし…… 確かに僕は変態だよ？ でも、今の僕は真剣なんだから！ 月子ちゃんのために！」
なんか僕は必死で、いつの間にか、月子ちゃんの肩をしっかりと掴みながら立って話していた。
「先…」
「ねえ、僕がこんな能天気にみえる？ 僕は君に信じてもらいたいんだよ！ ねえ、月子ちゃ…」
バサッ…
僕は、月子ちゃんに押され倒され、離された。
「まだ多少クラッと来ている私にそんなこと言っても無駄です、もう一人にさせてください」
「待ってよ！ ムキになり過ぎたことには謝るけど、君を一人にさせたくなんか…」
「それもただ格好をつけたいだけですよね？ わかっています。先輩のことをわかっていますからこそ、ここは離してください」
「何言ってるの！？ 君は僕のことを全然わかってないじゃん！ ただ『変態』ってところだけ！ それ言っておくけど短所だよ！？ 長所の何一つもわかってない君が、『わかっている』なんて言う価値はないよ！」
どうしよう？
確かに月子ちゃんも言い過ぎだけど、自分が何を言っているかわからない。
「……もう、先輩なんか、私の先輩じゃありません。あなたのことが大っ嫌いですっ」
そして僕は、酷く散々に言われた末、月子ちゃんに先輩と思われなくなり、嫌われてしまった。
でも、もしかしたら、月子ちゃんは心の中では泣いているのかもしれない。
この場を去ろうとする月子ちゃん、本音は一体…
第２７話 悪いタイミングと急なお誘い。→←第２５話 先輩後輩の絆と不思議な展開。
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作者名：シロイルカ | 作成日時：2013年12月18日 21時
