答えあわせ 2

89.° ページ39

『颯、この日、指名で予約入ったよ。』

『はーい、』

徹さんからそう言われた時、
それが里紗だなんて、思いもしなかった。

予約表に書かれた名前に気付いたのは前日で。
直接俺に連絡しない理由が、
分かりそうで、分かるのが少し怖かった。

「･･･可愛くしてください」

そんな風に言った里紗に、少し驚いた、けど。

『誰のために？』

聞かなくたって、分かってた。

泣きそうな顔をしている弱虫を、
連れて、俺はシャンプー台へ向かう。

･･･

「はやちゃん、あの、シャンプー･･･」

シャンプー台は、
カットする場所とは少し離れていて。

半個室みたいになっているから、
会話は、俺達以外の誰にも聞こえない。


シャンプー台に座ってもらって、台を倒して。
ガーゼを乗せた状態でなんにもしない俺に、
不安そうに里紗は声を出した。

『聞かせてよ、返事』

分かりきってる。
それでも、言いたいのに言えないであろう、
里紗を見るのは辛かった。

そして俺も、答えが欲しいんだ。


「私、大輝のことが好き･･･」

『よくできました。』


声を震わせた里紗が言う。
俺は、予想通りの答えに何だかほっとする。


「ごめんね･･･」

謝る里紗に、俺が今、出来ることは。

『可愛くします、誰よりも。』

幼馴染、そして、美容師として、
里紗を可愛くすることだけだ。

･･･まあ、元から可愛いけれど。


そのサラサラの髪に触れるのは。
俺だけが良かったな、なんて。
思った気持ちは、水の音にかき消した。

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