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『大輝くーん』
「なに?」
外出続きで溜まった営業報告書を片付ける。
それは想太も同じで、
パソコンを見続けたせいで目が痛い。
「今日、里紗ちゃん休みなんですね」
『……あ、そうなんだ』
どうせ大輝くんそろそろ休憩しません?とか
言ってくるんだと思ったから。
まさか里紗の話が出てくると思わなくてちょっとだけ動揺。
『里紗ちゃんに部内回覧の資料渡すために部署行ったら
今日高熱で休みだって言うてましたけど、大丈夫ですかね?』
『…え?』
キーボードを叩く手が止まれば、
想太はニヤリと笑ってこちらを見た。
『…気になります?』
『うるせえよ』
『大輝くん怖い〜』
里紗のことになると、完全に想太にからかわれる。
…けど。
やっぱちょっと心配だ。
……
ビルの外に出れば、風がふわりと吹いた。
想太から話を聞いたあと、急ぎで仕事を片付けて。
ちょっと外出てくる、なんて想太に言えば。
ニヤニヤしながら何か言ってたけど、無視。
「もしもし、大輝?心配して電話くれたの?笑」
『まーそんなとこ。大丈夫?』
電話越しの里紗は、思ったよりも元気そうで、
ほっと一安心。
だったけど。
『…里紗?』
次の言葉が返って来ない代わりに。
「…っはやちゃん?」
そんな聞きたくない名前と、遠くなる声。
黙ったまま、耳をすましてみれば。
何を言ってるか分かんないけど、男の人の声が聞こえて。
なるほどね。
電話をぷつり、切ってはあ、とため息をつく。
俺じゃない。
今、里紗の側に居れるのは俺じゃない。
遠く感じるのも、ムカつくのも。
自分の感情がコントロールできなそうなのも。
もう、そろそろ限界だ。
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あかり(プロフ) - 。さん» はじめまして!そう言っていただけて嬉しいです!励みになります。これからも最後までお付き合いください◎ (2017年10月25日 8時) (レス) id: 7a52df4d5b (このIDを非表示/違反報告)
。 - すごく凄く面白くて表現がとても綺麗で読んでいてきゅんって、できるような作品でとても好きです。 (2017年10月25日 0時) (レス) id: ff129d1410 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あかり | 作成日時:2017年9月24日 0時