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佐野「お待たせしましたあ！」
勢いよく扉を開けて入ってきた佐野くん。
―と、その後ろでげんなりした顔。
小島「お、大晴も来たやん」
福本「疲れた…」
委員会の集まりを終えたらしい福本くんも合流し、これでやっと練習らしい練習ができると思ったのも束の間。
A「―えっ？」
小島「せやから無理やで、練習。」
思わず耳を疑った。
A「…曲決めてへんの…？」
無謀どころか不可能だ。
たった2週間とちょっとで基礎から学んで楽器に慣れ、曲を演奏するなんてとてもじゃないけどできっこない。
福本「俺あれやりたい！この間カラオケでこじけんが歌ってたやつ！」
小島「あ〜！あれええやんなあ！」
佐野「俺もやりたい曲あるんすよ〜」
正門「あ、てか誠也くん知らん？」
福本「知らんなあ」
佐野「どこ行ったんすかねえ」
それなのにどうしてこの人達はこんなにも悠長なんだろう。
A「待って、ほんまにどうするん？今月末なんやろ？」
私の言葉に静まり返る部室。
小島「…さあ？何とかなるんちゃう？」
A「"何とか"って…」
"よし！"と声を上げて福本くんが立ち上がった。
福本「とりあえず音出す？」
正門「せやな、そうしよか」
A「そもそも何の楽器…」
突如響いたパーカッションのリズムとシンバルの高音によって私の質問は一瞬で掻き消された。
A「えっ」
いつの間にかドラムセットに座っていた佐野くんが慣れた手付きでスティックを回す。
彼がドラムを叩けることを知っていたとはいえ突然のことに戸惑って―
A「えっ」
キーボードのメロディに振り返ると、さも当たり前のような顔で鍵盤に触れる小島くんの姿が。
更に驚く間もなくベースの音色が響き、それが福本くんによるものだと気付いた時には正門くんが鳴らすギターが聞こえてきた。
A「え…皆楽器できるん？」
小島「そらそやろ」
佐野「じゃなかったら軽音部やりたいなんて言わんっすよ」
福本「俺はまだまだやけどなあ」
正門「ギターはずっと趣味でやってたから」
―これなら間に合うかもしれない。
ふと希望が芽生えた瞬間、ここがスタートラインなのだと悟った。
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
