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佐野「てか何屋さんなんすか？」
草間「焼肉屋」
正門「うわ〜！今日丁度焼肉食べたいなあって思ってたんすよ〜！」
ニコニコと嬉しそうな正門くん、年齢に似合わず胃もたれがどうのこうのとブツブツ呟く末澤先輩。
先程まで静かだった車内が徐々に盛り上がってきた。
小島「え、誰が焼くん？先決めときましょ！」
末澤「ええやんかそんなん、その場で適当に…」
小島「絶対揉めるっすやん！」
部員達が和気藹々と話し合う一方、隣の福本くんはやけに静か。
A「…大丈夫？」
車酔いでもしたのかと心配して顔を覗き込むと、福本くんは慌てたように笑顔を作ってみせた。
福本「ごめんごめん、ちょっと考え事してた」
それが本当なのか嘘なのかはさておき、明らかに元気がない。
普段の笑顔が眩しいからこそ彼の異変は分かりやすい。
いつもと違う口角の上がり方は不自然で、苦笑いのようにもとれる。
末澤「何？大晴どうしたん？」
福本「えっ、何もないっすよ」
正門「体調悪いん？」
福本「いやいや、全然元気やで」
絵に描いたような空元気を不審に思うものの、あまり突っ込んで話せば失礼に当たると思った私はそっとしておくことにした。
室「大晴調子悪いん？」
運転席から先生の声が飛んできた。
室「もうすぐパーキングやから吐くんやったらそこで吐いてな」
福本くんの心配というよりかは車の心配をしているらしい。
室先生らしい発言に思わず口角が緩む。
暫く走ってパーキングエリアに到着した。
飲み物調達やお手洗いの為に部員達がゾロゾロと車を降りていく。
A「福本くんは？」
福本「あ、ううん、俺はええよ」
特に用事のない私も福本くんと残ることに。
室先生も降りてしまった為、車内には2人きり。
騒がしい声と背中が遠ざかっていくのを窓から横目に眺める。
福本「あの…さ、」
A「ん？」
福本「いや…」
濁すような作り笑い。
さっきと同じ表情。
A「…何？」
何か壮大な悩みを吐露されるのではないかと軽く身構える。
福本「2人で行きたかったなあ…って」
A「えっ？」
福本「ご飯、2人で食べたかったから…」
A「私と？」
福本「そう、Aちゃんと。」
真っ直ぐな眼差し。
訪れた沈黙からは逃げられない。
福本「…好き、なんよ。Aちゃんのこと。」
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
