祝・草むしり部発足！ ページ44
小島「え〜！？」
合宿3日目の朝、小島くんの悲痛な叫びが響き渡った。
小島「また〜…？」
室先生から言い渡された本日のメニューは昨日の間に終わらなかった分の草むしり。
勿論小島くん以外の部員もげんなりした表情を浮かべている。
だけど今日は昨日と違う。
皆にとっては変わらないかもしれないけれど、私にとっては確実に違う。
末澤「文句言ってもしゃあないやん」
佐野「やるしかないっすねえ」
正確には昨晩から違う。
末澤先輩の手のひらが私の頭を撫でてから―
福本「Aちゃん」
軍手を着けた福本くんが私の顔を覗き込む。
朝から爽やかな彼の笑顔は今日も眩しい。
福本「一緒にやらへん？」
A「あ…うん」
その提案に頷きつつ、目だけで末澤先輩の姿を追う。
福本「昨日より暑いよなあ」
A「うん、暑い」
気だるそうに軍手を装着する仕草を捉えては逸らし、リチャ先輩と談笑する横顔を捉えては逸らしての繰り返し。
この行為に何の意味があるのかと問われれば答えることはできないけれど、何故かやめられない。
ほぼ無意識的に視線を動かしてしまう自分が不思議で仕方がない。
福本「明日で終わりやなあ」
A「…うん」
視界の隅で同じ作業を行っているはずの先輩を遠くに感じる。
彼の目の前にしゃがみ込んでいるリチャ先輩を羨ましく思った。
福本「結局何もできてへんよなあ、俺ら」
A「うーん…」
額の汗を拭う手付きでさえ昨日までとは違って見える。
それが何故なのかは分からないまま、モヤモヤと心の中を違和感だけが漂っている。
福本「…Aちゃん聞いてる？」
A「えっ？聞いてるよ、聞いてる聞いてる」
福本「ほんまに…？」
福本くんには申し訳ないけれど今は暑いだとか合宿がどうだったとか、それどころじゃない。
目の前の雑草達にも全く集中できない。
そもそもこの気持ちの正体は―
佐野「ええっ！？そうなんすか？」
室「そうよ？」
小島「え、マジで？マジの話？」
佐野くんと小島くんの騒がしい声が聞こえて振り返る。
佐野「ほんまにあるんすか？」
室「うん、あるよ？」
驚く声、そして目を見合わせる小島くんと佐野くん。
室「あ、皆もちょっと聞いて〜。合宿終わったらOB訪問あるからね〜。」
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
