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A「私は…」
勝手に腹を立てて勝手に帰宅して、
勝手に気まずくなって謝ることもできず勝手に避け続けてきた。
我ながら自己中心的で幼稚な態度に呆れる。
A「あの日は…ごめんなさい」
末澤「いやええよ、俺が悪かったし」
年齢も学年も1つしか変わらないはずなのに大人に感じる。
先輩が歩み寄ってきてくれなければ卒業までこのままだったのかもしれないと思うと恐ろしい。
やはり彼は私なんかより何枚も上手だ。
A「でも別に怒ってないです︎」
末澤「嘘つけ、合宿始まってからもずっと変やったやん」
A「あ、それは…」
まだ誰にも話していなかった胸の内を1つずつ話した。
1人だけ性別が違うことによって感じた不安や疎外感、いたたまれなさや情けなさ。
初日にネガティブ思考が止まらなかったこと、佐野くんに冷たい態度を取ってしまったこと。
仲間を仲間だと思えなくなってしまったことや自信を見失ってしまったことも。
話していくうちに楽になっていく気がした。
否定も肯定もせずに時より相槌を打つ末澤先輩との空間を居心地良く感じた。
A「…完全に私が自分勝手なだけです、ごめんなさい」
末澤「ええんちゃう？」
A「え？」
末澤「不安になるくらい俺らとの時間楽しんでくれてるってことやんか」
A「それは…まあ」
末澤「疎外感が悲しいってことはそういうことやろ」
先輩の言う通り。
時が過ぎればあっという間に感じるであろうこのメンバーでの活動を愛おしく思っている。
末澤「…そろそろ戻るわ」
立ち上がった末澤先輩が私の頭にそっと手を置いた。
末澤「おやすみ」
―跳ねた。
誤魔化しきれないほど確かに心臓が跳ねた。
急に恥ずかしくなってきた。
頬に熱が集中し、徐々に鼓動が早くなる。
A「あ…おやすみなさい」
自分でもよく分からない気持ちが押し寄せてくるのが分かる。
末澤「あ、あと」
A「はい…？」
ドアノブに手をかけた末澤先輩が首だけでこちらを振り返った。
末澤「別にそういうつもりで言ってへんからな」
A「へ？…何をですか？」
末澤「別にお前のこと誰かと付き合ったり別れたりして人間関係掻き乱すような奴やと思ってへんで」
誤解が解けた瞬間だった。
末澤「あと恋愛禁止も嘘やし」
A「…えっ！？」
私の言葉を聞くより先に先輩は廊下へと消えていった。
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
