真夏の地獄で一致団結 ページ40
佐野「今日は何するんすかー？」
合宿2日目、朝早くから叩き起された私達は眠い目を擦りながら室先生と向き合った。
室「えー、今から草むしりをしてもらいます！」
小島「はあ？もう嫌やって…」
室「文句あるんやったら1人で帰ってもらうからなー！」
一体どのタイミングでスイッチが入ってしまったのか、完全に熱血教師モードの室先生。
一方、部員達のやる気は昨日のマラソン以来完全に損なわれてしまっている。
室「ほな軍手つけて外行こか」
私も私とてネガティブ思考から抜け出せておらず、肩身の狭さを否定しきれないまま。
小島「ふあ〜、ねっむ」
正門「俺も昨日あんま寝れへんかったわあ」
福本「慣れてへん環境やと眠り浅なるよな〜」
だらだらと立ち上がって渡された軍手を身に付けた。
今日の天気は曇り。
昨日の炎天下を思えば遥かにマシではあるけれど、暑いことに変わりはない。
草間「どこまでやるんすか？」
室「ここら辺全部やな」
佐野「…全部…」
この施設の周りには雑草という雑草が生い茂っている。
室先生の言う"ここら辺全部"がどこからどこまでなのかは分からないが、それなりの時間を要するのは明白。
お昼ご飯までの時間を草むしりに費やしたとて間に合わないだろう。
正門「…もしかして」
小島「今日1日中これ…？」
室「終わらんかったらそうなるんちゃう？」
絶望を描いたような表情が7人分並んだところで地獄の草むしりが始まった。
末澤「あっつ…」
これが一体何の合宿で私達が何の団体なのか危うく忘れてしまいそう。
入部前は音楽に対して拒否反応を示していたはずの私が楽器に触れたいとさえ思い始めている。
次どこかで演奏できる機会があるとすればどこだろう。
その時は誰のどんな曲がセットリストに選ばれるんだろう。
小島くんが言っていたオリジナル曲は本当に実現するのだろうか。
先輩の卒業までに何か1つでも成し遂げられるのだろうか。
―そんな考えが巡っていることに我ながら驚いた。
ネガティブ思考が徐々に向上心へと変化している。
無言で草を抜き続ける6人それぞれのこめかみを伝っていく汗、眉間に寄ったシワ。
皆が何を考えているのかは分からないけれど、きっと私と近しい思いを抱いているのではないだろうか―
小島「…はよ終わらせて今日こそ曲やりたいわ」
ふと呟かれた小島くんの言葉に全員が頷いた時、全員の思いが一致していることを確信した。
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
