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ようやく走り切った私は勢いよく草むらにダイブして空を仰いだ。
A「…終わった…」
汗でベタベタする頭皮に雑草が絡む。
だけど気持ち悪い感覚よりも体力の限界の方が圧倒的に大きい。
室「おー、お疲れお疲れ！」
キンキンに冷えたペットボトルの水を額に乗せる。
それでも一向に涼しさは感じられず、仕方なく体を起こして一気に水分を乾いた喉へ。
室「ええ飲みっぷりやなあ」
飲み込む度に喉が鳴り、水が食道から胃へと駆け巡っていくのが体内の感覚で分かる。
上下する胸を抑えて呼吸を整え、鉛のように重たい脚をぼんやりと眺めながら明日の筋肉痛を覚悟した。
A「…皆は？」
私より先に走り終わった6人の姿はない。
室「シャワー浴びてんちゃう？」
―ほら、やっぱり。
置いてかれるやん、私。
先に先に進んでいく男子6人と行動のテンポが合わない私。
もしかしたら邪魔者なのでは、とネガティブな思考が浮かび上がって悔しくなる。
A「私もお風呂行ってきますね、」
フラフラと立ち上がって施設の中へ。
ドアを開けた瞬間、火照った頬に空調の風を感じて心地よくなった。
佐野「あ、Aちゃん！」
髪を濡らした佐野くんが雫を散らしながら駆け寄ってきた。
A「あ、お疲れ…」
既にシャワーを浴びたであろう彼からシャンプーが香る。
対して汗だくの私はなるべく近寄らないよう距離を取って視線だけを合わせた。
佐野「Aちゃんもシャワー行きますか？」
A「うん…」
廊下の奥からリチャ先輩と正門くんの声がする。
多分皆はもうシャワーを浴び終えて次の行動に移るはず。
そう思うとやっぱり何となく寂しくて悔しくて、手元のペットボトルを強く握り締めた。
佐野「…Aちゃん？」
A「ごめん、通してくれる？」
即座に視線をずらして部屋に向かう階段を駆け上がった。
"お荷物"という言葉がピッタリな自分に嫌気がさす。
楽しみにしていた合宿でまさかこんな気持ちにさせられるとは。
1人での暮らしには慣れているはずなのに、無性に部屋を広く感じる。
皆と同じ歩幅で進みたかったはずの心はどこかで置いてけぼりになってしまった。
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
