たったひとりの女の子 ページ37
施設の方への挨拶を終えて各々部屋に荷物を置きに行った数分後、学校指定の体操服に身を包んだ6人がゾロゾロと廊下を歩いてきた。
福本「まっさんと怖い話したかったあ」
正門「リチャくんと同じ部屋でよかったあ…」
佐野「誠也くん！夜は2人でトランプします？」
末澤「2人でトランプって何ができるん？」
私を除く6人は2人部屋らしく、ジャンケンで決まった部屋割りへの不平不満や期待の声が聞こえてくる。
それをほんの少しだけ羨ましいと思ったのは秘密。
女子生徒が1人しかいないという事実を窮屈だと思ったことはないけれど、時々感じる疎外感から目を背けることはできない。
室「よし、全員来たな」
小島「何するんすか？」
室「まずは体力作りや」
佐野「"体力作り"？」
室先生が鼻息を荒くした。
室「マラソンすんで！」
確かに体力は大事やけど。
室先生は間違ってへんと思うけど。けど。
―やとしても初日からマラソンはキツいって、流石に。
額とこめかみを汗が伝っていく。
拭っても拭ってもキリがない。
A「きっつ…」
周りは自然たっぷり。
アスファルト地獄よりは涼しいけれど、それでも暑いものは暑い。
室「無理したらあかんでー！」
少し後ろで自転車を漕ぐ室先生の声援が聞こえる。
室「水分補給もしてええからなー！」
どんどん足が重くなっていく。
脇腹の辺りも痛む。
歌うにしても楽器を演奏するにしても体力は絶対的に必要になってくる。
何事も体が資本なのは基礎中の基礎。
だけど残念ながら私は運動神経に恵まれていない。
A「マジきつい…無理…」
私の前を走っていた小島くんの背中がどんどん離れていく。
男子と女子では根本的な体の作りが違うらしい。
走っても走っても追い付けそうにない。
それどころか徐々に距離が離れていくばかり。
室「ええよ、自分のペースで走れば」
隣にきた室先生の優しい声かけに返事をすることもできず、腕を振るので精一杯。
先頭の福本くんは見えなくなってしまった。
その後ろを走る末澤先輩の後頭部も遠ざかっていく。
―これって女子にめちゃくちゃ不利ちゃう？
走り切るのにも時間かかるやろうし、置いてかれる一方なんちゃう？
不安な気持ちと共に先程も感じた疎外感が大きくなっていく。
果たしてこのままやっていけるのだろうか。
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
