ここから始まる3泊4日 ページ36
満を持して夏合宿初日が訪れた。
室「シートベルトせえよ！」
福本「はーい！」
佐野「Aちゃんグミ食べますー？」
室「借りてる車やねんから飲食禁止！」
小島「えぇっ！？俺もうポテチ開けたのに〜！」
校舎前に集合し、室先生の運転で合宿先へ向かうことに。
約束の時刻ピッタリに全員が集まったのはこれが初めてかもしれない。
草間「楽しみやなあ」
福本「まっさん、夜怖い話せえへん？」
正門「絶対嫌」
車内はかなり騒がしい。
まるで遠足に向かう小学生。
末澤「うるさいなあ」
言葉ではそう言いつつも楽しそうな末澤先輩。
彼も彼とて等身大の男の子。
合宿というイレギュラーなイベントにテンションが上がっているらしい。
夏の日差しがアスファルトを焦がしている。
窓の外で灼熱の太陽が顔を覗かせる。
暑いのはずっと苦手だったけど、今年の夏はそんなに嫌いじゃない。
ふと右腕に体温を感じた。
カーブの遠心力で傾いた末澤先輩の左腕が密着している。
甘い香りと気まずさが同時に漂い、私はなるべく気付かないふりをした。
小島「飯とかどんなんなんすか？」
室「着く前から飯の話すな！」
正門「大浴場ですか？」
室「そやな、皆で入れるタイプのとこやな！」
果たしてどんな練習が行われるのか、
どんな風にこの部活が変わっていくのか―
室「はい！到着！」
室先生の声で目が覚めた。
どうやら気付かぬうちに寝てしまっていたらしい。
小島「あかん、ねむ…」
序盤で騒ぎすぎたせいか、小島くんも佐野くんも寝ぼけ眼。
室「はよ降りるで〜」
荷物を持って各々車の外へ。
室「ここが今日からお世話になる施設です！」
大欠伸で歪んだ視界がスッキリしてきた頃、初めて目の前の景色を認識した。
正門「おお…」
小島「…山々…やなあ」
佐野「…っすねえ」
思っていた何倍も田舎。
寧ろ田舎というよりかは大自然。
長時間の車移動にも納得できる。
草間「ええとこやん」
リチャ先輩だけはケロっとしているが、他の部員はポカンと口を開いたまま。
末澤「…俺らほんまにここで3泊するん？」
福本「まあ…今更引き返せんっすから…」
正門「…ほんまにエアコンついてんのかな」
ズカズカと進んでいく室先生の背中を追うように建物の扉をくぐった。
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
