自分達だけのメロディを ページ35
毎日部室に顔を出しては練習したりしなかったり、
帰り道にラーメンを食べに行ったり行かなかったり。
日々上がっていく気温にバテ気味ではあるけれど、それなりに充実した夏休みが過ぎていく。
小島「なあ」
A「ん？」
小島「こういう曲は？」
A「ああ、ええやん」
部室の空調が直ったことにより練習環境も快適で、正門くんが大量の汗をかくことも少なくなった。
最近は流行りのバンドソングをアレンジしたり、しっとりしたバラード調の曲に挑戦してみたりしている。
小島「…ってか2人なん？」
A「遅れてリチャくん来るって」
小島「いやいやいや、明日から合宿やろ？こんなんでほんまに大丈夫なん？」
A「まあ…」
不安なのは私も一緒。
夏休みが始まって以来、大体誰かと2人か3人で過ごしている気がする。
あまりにも低い出席率に呆れ返るのも日常茶飯事。
A「小島くんも昨日と一昨日おらんかったやろ？」
小島「何も言い返せへん…」
果たして初めての夏合宿がどうなることやらさっぱり想像つかない。
室先生がどんな練習を考えているのかも分からないし、そもそも部員は全員集まるのだろうか。
小島「誠也くんも来おへんしなあ」
あの日以来、末澤先輩とは何となく気まずくてちゃんとした会話は交わしていない。
小島「…なあ」
A「何？」
ふとスマホから顔を上げる。
小島「俺らカバーしかしてへんやん？」
A「うん」
小島「俺らだけの曲欲しいなあ、って」
A「え？作詞作曲するってこと？」
小島「…できひんかな？」
少し恥ずかしそうに話す小島くん。
何だかんだで軽音部を1番愛しているのは彼なのかもしれない。
A「まあ…どうやろ」
作詞も作曲も決して簡単な作業ではない。
知識や技術がなければ難しい。
A「やろうと思えば…できるんちゃう？」
否定したくなかった。
小島くんの小さな希望を。
小島「いつかできるとええなあ、」
案外ちゃんと部のことを考えている小島くん。
教室の中で見る彼とは少し違う横顔。
末澤先輩やリチャ先輩の卒業後に軽音部を引っ張っていくのは彼なのかもしれない、とふと感じた。
A「…いつか絶対作ろ」
小島「え？」
A「私らのオリジナル曲、絶対作ろ」
私の中で音楽へのモチベーションが一気に上がった。
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
