使えるコネは全部使おう ページ31
そして迎えたイベント当日。
緊張感に包まれた部員達―
ではなく、ポカンと口を開いた6人が出演者テントの中にいた。
A「え…何？皆どうしたん？」
室「お、A来たやん！」
A「トイレ行ってて…何があったんですか？」
並んだ間抜け面を横目に小島くんの隣へ腰掛ける。
室「夏合宿あるよって話を今したとこ…」
A「えっ！？合宿！？」
―こうして7人目の間抜け面が誕生した。
草間「俺もうシフト提出したんやけど」
室「あかんあかん、取り消してもらえ」
小島「そもそも何で合宿なんすか？」
室「んなもん部活といえば合宿やろ」
佐野「そんなノリで決まるもんなんや…」
正門「でも俺ちょっと楽しみかも」
何も聞かされていなかった私達は各々驚きやら期待を胸にリハーサルへ。
本日はもれなく快晴。
既に汗を滲ませた正門くんが顔を歪める。
詳しい話を聞いたところ、合宿が行われるのは夏休み中旬。
室先生のコネとツテをフル活用して用意したらしい合宿先はここから少し離れた場所にある施設。
普段は他校の軽音楽部や大学の軽音サークルが練習に使用する場所らしい。
たった3泊4日で何が変わるのかはよく分からないけれど、全員が練習に参加できるという大きなメリットがある。
室「ええとこやで？クーラーもついてるし！」
小島「クーラーなんか今時どこでもついてますって」
草間「まあこないだまでそれすら無かったんやけどな、うちの部室。」
何だかんだ協力的な室先生に見守られながら本番のステージへ。
―だがしかし、頭の中は合宿のことでいっぱい。
歌っている間も弦を弾いている間も終始埋め尽くされたまま。
末澤先輩の高音ボイスにハモりながらそっと横顔を盗み見る。
合宿中は彼とずっと同じ建物で過ごすことになる。
私は何故かそのことが気になって仕方がなくて落ち着かない。
―あかん。集中しよ。
そう思って正面に視線を逸らす。
その時、奥の関係者用テントから出てくる黒いジャケットを身に付けた男性の姿が目に入った。
A「えっ…」
思わず戸惑いが声に出た。
間奏中によりマイクに拾われることは無かったものの、焦りを隠しきれない。
間違いない。
あの男は―
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
