Aぇ!軽音楽部!!!!!! (ページ29)

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草間「うーん…あんま深い意味ないやんな？」

佐野「そう…っすねえ…」

目を見合わせる2人。

福本「あれちゃう？元々まっさんとリチャくんが知り合いで、」

草間「あ〜！正門が"リチャくん"って呼ぶからや！」

佐野「確かに！それで皆呼び始めたんや！」

あまりにも自然すぎて本人達も詳しくは覚えていなかったらしい。

A「正門くんのこと元々知ってたんですか？」

草間「そうそう、小学校同じやから」

佐野「へえ〜！そうやったんや！」

草間「そん時の名残りで"リチャくん"やなあ。」

小学生時代のリチャ先輩ってどんなんやったんやろ。

全然想像つかん。

草間「その流れで末澤も下の名前で呼ばれるようになったよな？」

福本「"末澤先輩"より"誠也くん"のが呼ばれやすいって言ってた気しますわ」

佐野「最初は緊張してたけど今では当たり前やもんなあ、その呼び方」

そして3人の視線が一斉に私へと向けられる。

福本「Aちゃんはずっとそのままなん？」

佐野「ずっと気になってたんすよ〜、それ」

―と言われましても。

末澤ガールズが蔓延る校内で彼のことを下の名前で呼ぶような勇気はない。

その上、後輩の立場で"くん"だなんて。

私が望む平穏な学校生活から程遠い場所へ連れて行かれてしまいそうで、想像するだけで怖い。

A「私は…とりあえず大丈夫」

いつか皆と同じように彼の名を呼べる日が来るのだろうか。

もしその日が来るとするならば、それはいつだろうか―

3年生の2人には"卒業"という大きなタイムリミットがある。

末澤先輩が軽音部の始動を焦っていたのもその為。

今から1年も経たないうちに彼らは次のステップへと進んでしまう。

長い長い人生の中で高校生活はたった3年間しかない。

この時間はやり直すことも取り返すこともできない。

今しか存在しないもの。

そしていつしか思い出と化し、記憶の片隅で燻りながら忘れ行くもの。

佐野「あっ！！」

草間「何やねんいきなり…」

佐野「A"ちゃん"って呼びたいです！」

こんな些細な会話や日常の瞬間なんてきっとすぐに忘れてしまう。

進学や就職で離れ離れになってしまえば、無かったも同然。

A「全然ええよ」

佐野「よっしゃ〜」

何だか途端に寂しく思えた。