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末澤「ほんまはあの曲嫌なんちゃう？」
ふと声をかけられてほんの一瞬だけ怯む。
この人に何かを隠そうとしたところで無駄だと悟った。
結局アレンジと歌割りについて話し合っただけで1度も楽器に触れることなく部活終了時刻を迎えた。
いつも通り帰宅しようとしたところ、忘れ物をしたことに気付き途中で引き返した。
そんな私を待ち構えるかの如く部室に残っていたのは末澤先輩だった。
A「まあ…複雑ではありますけど…」
正門くんの嬉しそうな笑顔が思い浮かぶ。
佐野くんも小島くんもすごく楽しそうだったことを思い出す。
A「…もう決まったことですから」
彼らの喜びや楽しみを奪う権利なんて私にはない。
自分勝手な私情で壊したくはない。
末澤「へえ、偉いやん」
そう言って少し微笑んだ先輩は傍にあったアコギを手に取った。
軽く弦に触れて柔らかい音色を響かせる。
A「…先輩はギター似合わないですね」
末澤「何やねんお前、失礼やな」
A「正門くん見慣れてたら誰でもそうなりますって」
末澤「…ふーん？」
悪戯っぽい笑み。
末澤「ほんまはあの曲嫌やけど正門の為に我慢してるってこと？」
幼稚なからかい方をしてくる先輩に呆れる。
A「そんなんちゃいますって」
末澤「正門なあ？ええ奴やんなあ？優しいしなあ？」
A「…子供みたいなこと言わんといてください」
忘れ物を鞄に詰めて立ち上がったところでふと思い出す。
A「あ。」
末澤「ん？」
A「そういや先輩も受け取ってましたやん、手紙」
末澤「"手紙"？」
A「末澤ガールズの方から。」
少し考え込むような表情をした後、すぐに"ああ〜"と頷いてみせた先輩が鞄の中に手を入れる。
取り出した1枚の封筒は淡いピンク色の可愛らしいデザインで、見るからにラブレター。
末澤「…入院するから学校辞めるって」
A「え？」
末澤「そんなん言われたら受け取るしかないやろ」
意外すぎる理由に驚いた。
あれだけ忌み嫌っている末澤ガールズ達にも人の心を向けることはできるらしい。
末澤「ま、返事とかはせえへんけど」
A「でしょうね」
でも何だかんだ捨てずに持っているあたり、彼の優しさを感じる。
末澤「妬いた？」
A「はい？」
末澤「妬いてるから聞いてきたんやろ？」
A「…意味分からんこと言わんといてください」
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
