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結局福本くんの提案を断り切れず、一旦バス停までは傘の中に入れてもらうことになった。
彼とは家の方面が同じで乗るバスは同じ。
ただ降りるのは私の方が先。
A「よく考えたら私が降りるとこ、目の前コンビニやからそこで傘買うわ」
福本「あ、そうなん？ほんなら帰れるやん！」
雨のせいで殆どの部活は中止になったらしく、バス停までの道のりに人影は殆どない。
少しだけ安心するも油断はできない。
大粒の雫がゆっくりと伝って落ちていく。
傘の中で響く雨音がやけにうるさく感じる。
何を話そうかと考えながら妙な気まずさと戦う。
福本「そっち濡れてへん？」
A「大丈夫」
2人で1つの傘。
この大雨から身を守るには装備が弱すぎる。
私は濡れていないけれど、恐らく福本くんの左肩は既に水浸し。
福本「よし！あとちょっとや！」
A「バスちゃんと来るかな…」
福本「雨の日ってダイヤめっちゃ乱れるよな、」
時々ぶつかる腕と腕。
緊張と申し訳なさが入り交じる帰り道。
福本「お、バスこっち向かってきてるやん」
無事バス停に到着した私達は混み合う車内に何とか乗り込んだ。
福本「ほんまえぐいわ、雨」
やっぱり福本くんの左肩が濡れている。
A「…ごめん」
福本「え？何で謝るん？」
A「そっち濡れてるやんか」
福本「ええよそんなん！気にせんといて！」
―と言われても流石に気になってしまう。
風邪でも引いたらどうしよう、なんて考えつつ窓の外を眺める。
そんな私達を乗せたバスは案外順調に進み、気が付いた時には自宅付近の景色が広がっていた。
福本「…ん？コンビニってどこ？」
A「あれやで」
バス停から50mほど離れた場所にあるコンビニを指差す。
福本「…全然"目の前"ちゃうやん！」
ナイスツッコミ。
―ではなく、本当に申し訳ないのでここで帰ってほしい旨を必死に伝える。
福本「流石にあかんよ！コンビニまで傘差すって！」
結局振り切ることができずに2人でバスを降りた。
福本くんの優しさに甘えっぱなしの自分が嫌になる。
A「ほんまにごめん」
福本「ええって」
そして辿り着いたコンビニエンスストア。
登校中の私が毎日寄っている場所。
A「…えっ！？」
店員「ごめんなさいねえ、売り切れなんです〜…」
流石に傘は切らさんといてくれます？
ちゃんと仕入れといてくれな困りますやんか、店員さん。
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
