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佐野「親に迎え来てもらってるんで行きますね」
草間「俺チャリやからこっちやわ」
小島「"リチャ"だけに？」
草間「小島は何を言うてんの？」
小島「俺も姉ちゃん来てるし行くわ！またな〜！」
福本「自由やな」
部活動終了時刻を迎えた瞬間あっという間に散り散りになっていく部員達。
ライブが決まったというのにこの調子で良いのだろうかと少し不安になる。
福本「雨止みそうにないなあ」
A「うーん…」
灰色の雨雲が覆いかぶさる空を見上げた。
福本「帰ろか」
歩み出した福本くん。
私はその後ろで立ち止まったまま。
福本「え？どうしたん？帰らんの？」
A「…絶対笑わん？」
福本「うん…何？」
A「…傘忘れた」
天気予報はチェックしていたものの、家を出る時に晴れていたせいですっかり忘れていた。
置き傘もなければ折り畳み傘もない。
完全にやらかしてしまった。
笑わないと約束したにも関わらず、福本くんはゲラゲラ笑いながら"こじけんの伏線回収や！"なんて楽しそうにしている。
A「…何なん？」
福本「ごめんごめん、まさかこの時期に傘忘れる子がおるとは…」
再び笑い始めた福本くんを睨み付ける。
福本「ごめんごめん、ほんまにごめんって」
そんなことより問題は帰宅手段。
A「どうやって帰ろ…」
福本「親とかは？」
A「あー…それは無理やねんなあ…」
福本「なら送ってこか？」
A「え？」
傘を開く音が昇降口に響く。
福本「一緒に入ってく？」
―まさに小島くんの発言が伏線回収された瞬間だった。
福本くんと相合傘しているところを以前のように誰かに見られてしまえば私の高校生活が終わる。
軽音部に属しているというだけで平和なスクールライフを送れないというのに、交際の噂なんて流された日には完全に終わる。
完膚なきまでに終わらせられる。絶対に。
A「遠慮しとく」
福本「え！？何で！？断るとこちゃうやんか！」
何の恥ずかしげもなく言ってみせた福本くんの耳元が微かに赤くなっていることに気付く。
彼なりに勇気を振り絞ってくれたのだと思うと、何だか少しだけ嬉しいようなそうでもないような。
A「でもバス降りた後家まで歩くのにどうせ濡れるし…」
福本「ええよ、家まで送ってくし。」
A「いやそれは流石に…」
―流石にまずい。
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
