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A「…嫌です」
返事をする声は少しだけ震えていた。
絶妙に居心地の悪い沈黙が訪れ、帰りたい気持ちが一気にピークへと達する。
福本「…誠也くん、どうするんすか？」
遠慮がちな福本くんの声が沈黙を破り、全員の視線が末澤先輩へと集中した。
末澤「…ま、ええやん。」
A「え？」
末澤「一旦入って考えても遅くないやろ！」
A「…私の話聞いてました？」
"最後"とか言うてたやん。何やねん。
答える必要なかったやんか。
末澤「ええってもう、ええ加減しつこいって。」
A「こっちの台詞なんですけど…」
私が末澤先輩と関わりたくない理由は主に2つ。
草間「なんか可哀想になってきたわ」
正門「こんだけ嫌がってたらそうなってきますよねえ」
末澤「はあ？お前らやってしつこく誘ってんねやから同罪やろ」
正門「まあ…それはそうなんですけど」
まず、すぐキレる。
キレるというよりかは、"吠える"。
些細なことからそうでないことまで全部同じテンション感で吠えてくる。
声はでかいしトーンは高いし、何よりもめんどくさい。
末澤「何やねん今更"可哀想"とか」
ムスッとした表情、眉間に寄せられたシワ。
"狂犬"とかいう誰かが付けたあだ名も納得しざるを得ない。
佐野「けどほんまにどうするんすか？集まらんっすよ、7人」
草間「せやなあ…」
ふと立ち上がった。
A「いっぱいいてはりますやん。」
草間「え？」
キョトンとする6人を横目に窓辺へ近付き、部室の外を指差した。
A「ほら、」
その先に見えるのは校門付近で群がる女子生徒達。
A「全員誘ったらめちゃめちゃ栄えますよ、軽音部。」
1年生から3年生まで学年問わず集まる彼女らは、
示し合わせたわけでもなければ義務的なルールもなく自主的にあの場所にいる。
正門「あー…」
福本「なる…ほど…」
3階から見下ろしていることは全く気付いていないらしい。
各々鏡で前髪をチェックしたり化粧を直したり、キョロキョロと辺りを見渡したり―
末澤「…おい」
あ、やばい。
危機感を察知したものの、時既に遅し。
アニメや漫画だったら"ゴゴゴゴゴ"ってオノマトペが使用されるであろうほどの怒りを真隣から感じる。
A「…はい」
末澤「お前入部決定な。」
A「いやそれは…」
末澤「あ？」
―末澤先輩と関わりたくない2つ目の理由。
それは彼の圧倒的な女子人気だ。
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
