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末澤「自信なくなったやろ」
真っ直ぐな瞳。
空の色を映したそれは私の心の奥底までも読み取ってしまいそうなほど澄んでいる。
末澤「ついてけるか不安なんやろ？」
あれだけ拒んでいた私がここに毎日通う理由。
それは彼の言う通り、自分自身に焦りを感じたから。
たかが部活、されど部活。
趣味程度に楽しく練習していれば良いわけじゃない。
本番に向けて必死に練習する部員達を見ていてそう感じた。
正直舐めていた。
彼らは私が思っていたよりずっとずっと本気で打ち込んでいる。
だからこそそこに実力が伴っていくのだ。
私も全力を出さなければ置いていかれるかもしれない―
そんな漠然とした不安を彼は見抜いていた。
それはきっと私の過去を知っているからこそ。
末澤「ま、大丈夫やろ」
私を入部させることを決意した末澤先輩の期待に応えたい気持ちも少なからずあるのかもしれないけど。
末澤「"天才"なんやから」
A「…そんなことないですよ」
いつからか私はその言葉に敏感になってしまっていた。
末澤「ま、あいつら何やかんやええ奴やしこれからも頼むわ」
窓の外で生徒指導教師の怒鳴り声が聞こえ、末澤ガールズ達が散り散りになっていく。
A「…何で嫌がるんですか？」
末澤「何を？」
A「"あれ"を」
諦めて渋々帰っていく女子生徒達を見下ろしながら指を差す。
軽音部に誘われて以来何かと注目を浴びている私。
末澤先輩が鬱陶しがる気持ちも分からなくはないけれど、少なからず彼は私と違って好意を向けられているはずなのに。
末澤「あー…あいつら？」
先程までの穏やかな表情とは打って変わって"狂犬"が出てきた。
末澤「鬱陶しいねんほんまに」
A「でも可愛い子もいてはりますやん」
末澤「俺ああいううるさい女無理やねんて」
そのうち地雷を踏んで吠えさせてしまいそうな気がした私は握っていたピックを置いて窓際から離れようとした。
A「…え？」
―でも、離れられなかった。
A「…何ですか？」
彼が腕を掴んでいる。
触れられた手首に熱を感じる。
A「せんぱ…」
佐野「すみません遅くなりましたあっ！」
ドアが開く音が聞こえると同時に佐野くんの声が響いた。
末澤「おー、佐野」
佐野「さっきの体育で転けた友達の荷物保健室に持ってったらこんな時間になっちゃったんすよ〜」
気が付けば既に手は離れていた。
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
