Aぇ!軽音楽部!!!!!! (ページ11)

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運命のセットリストページ11

末澤先輩が部活に顔を出したのは軽音部の活動開始から5日が経過した日だった。

小島「も〜！誠也くん遅いっすよ！何してたんすか！」

そして当たり前のように1時間遅刻してきた。

福本「ずっと待ってたんすから！」

佐野「俺なんか風邪治っちゃいましたよ〜！」

末澤「いやそれは治ってええやろ」

ここ数日は校内でも見かけなかった為、彼と顔を合わせるのは入部届を記入した日以来。

末澤「正門は？」

福本「生徒会の集まりって言うてました」

A「また？」

末澤「リチャは？」

小島「多分バイトっすね」

末澤「あ〜、そっか。」

欠員を"そっか"で済ませた末澤先輩は部室の隅にゆっくりと腰を下ろし、ニヤリと口角を上げた。

末澤「決まった」

小島「え！」

福本「曲っすか？」

末澤「うん」

彼が手にしていた1枚の紙を皆で囲む。

佐野「わ！これ俺がやりたかったやつや！」

小島「お〜！ええやんええやん！」

福本「うわこれ俺弾ける…？」

全部で5曲。

誰もが分かる有名な曲から、ややマイナーなバンドの曲までバランス良く整えられたセットリスト。

末澤「…で？後何日？」

佐野「大体10日ちょいっすね」

末澤「練習取り掛かろか」

福本「っしゃあ〜！」

それぞれに楽譜が与えられ、ようやく本番前であることを実感する。

それにしてもこんなギリギリから練習を始めて間に合うのだろうか―

末澤「いけるやろ？」

黙ってコード進行に目を通していた私の顔を大きな瞳が覗き込む。

狂犬というよりかは子犬のような表情。

A「あ…えっと」

予期せぬ至近距離に思わず後ずさってしまった。

ほのかに甘い香りが漂う。

末澤「何やねん」

A「いや…びっくりして」

末澤「音楽の授業以外で楽譜見るん久々ちゃう？」

小島くんがくるりとこちらを向いた。

小島「"久々"？」

不思議そうな表情を向けられて戸惑うことしかできずに俯く。

末澤先輩、今絶対わざと言ったやんか―

ここにいる皆は知らない。

私の過去を何ひとつとして。

―でも彼は知っている。

末澤先輩は"私"を知っている。

末澤「俺行くわ」

小島「ええっ？」

末澤先輩の言葉で小島くんの興味が逸れ、ほっと胸を撫で下ろす。

福本「どこ行くんすか！」

末澤「生徒会」

佐野「え？」

末澤「話つけて正門連れてくるわ」

ドアの向こうへ颯爽と消えていく彼の背中を初めて頼もしいと思った。