グッバイ スクールライフ ページ1
おかしい。
こんなの、絶対におかしい。
誰もいない放課後の美術室。
窓から差し込むオレンジの夕焼けが眩しくて目を細める。
美術部が休みで助かった。
ほっと胸を撫で下ろすも束の間、すぐに足音がして作業台の影に腰を下ろす。
「あいつどこ行ったん？」
「逃げ足早すぎやろ」
廊下から声が聞こえる。
「体育館の方ちゃう？」
そして遠ざかっていく足音。
だけど油断は禁物。
なるべく体を小さくして気配を消す。
―こんなはずちゃうやんか。
思わず溜め息をこぼした。
私は平凡且つ平穏な普通の高校生活を送りたかったのに。
目立つことなく、ごく普通でごく平均的な日々を過ごしたかったのに。
それなのに―
「ま、もう手遅れやけどな。」
A「そう、もう手遅れ…えっ？」
ここには誰もいないはず。
あくまで、"はず"。
A「て…おく…れ…？」
恐る恐る首を動かす。
「ん？」
積まれた画材とキャンパスの傍で壁にもたれて座る男子生徒。
開いたワイシャツの襟元にはネックレスが光っている。
嫌というほど見てきた悪戯っぽい口角の上がり方、子犬のような目。
A「いつの間に…」
「ずっとおったで」
A「ずっと！？…私が来る前からですか？」
「おったおった」
A「は…」
―あかん。完全にやらかした。
彼はニッコリと微笑み、立ち上がろうとした私の腕をすかさず掴んだ。
「どこ行くん？」
A「…帰ろうかな〜と…」
やっぱりおかしい。
どう考えたっておかしい。
何でこんなことになってしまったのか未だに理解ができない。
こんなん思ってたんとちゃうやん―
「逃がすわけないやろ」
A「…終わった…」
さよなら、私の平和なスクールライフ。
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年1月17日 15時
