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"付き合ってほしい"などと関係の発展を迫られたわけではない。
室先生の登場によりはばかられただけかもしれないけれど、"好き"以上の言葉を伝えられていないことは事実。
だから私から何かアクションを起こす必要はないように思える。
だけどあの真剣な表情と真っ直ぐな目を見てしまった以上、このまま放置しておくのも違う気がする。
彼は正面からぶつかってきてくれたのに、自分だけ逃げてしまうのはあまりにも卑怯だ。
小島「うっま!」
佐野「小島くん、そっち焼いてくださいよ」
小島「俺今食べてるやん!」
もしかしたらあの時に黙っていたせいで傷付けたのかもしれない。
今この場に来ていないのもそのせいかも。
そう思うと責任を感じる。
福本くんが私を誘わなければ皆でここに集まることもなかったのに、
リチャ先輩の仕事っぷりに見とれることも美味しい焼肉を堪能することもなかったのに、
彼のお陰で今この瞬間があるのに―
小島「あーあ、大晴勿体な。」
佐野「夏バテっすかね?」
そもそもの恋愛経験が乏しい私にはかなりの難題。
どうするべきなのか、そもそも選択肢すら分からない。
男の子に思いを告げられること自体が小学生ぶりで、私自身好きな人なんてずっといない。
正門「まあ…大晴も大晴なりに何か悩んでんちゃう?」
―正門くんやったらどうするんやろ。
ふとそんな疑問が浮かんだ。
正門くんは末澤先輩と違って自分に好意を寄せる女子達を杜撰に扱うことはしない。
丁寧に接した上で丁重にお断りする、それが彼のやり方。
小島「何も相談されてへんけどな」
正門「人に言えへんこともあるやんか」
"リア恋王"と名高い彼。
その異名は裏切らないはず。
A「正門くんってさ、」
正門「んー?」
A「彼女とかおるん?」
不意に浮かんだ疑問をそのままぶつけてしまった。
あまりにも唐突すぎたせいか、飲んでいた烏龍茶を綺麗にテーブルへと吹き出す小島くん。
小島「ちょ待って、何?急に何の話?」
佐野「何で小島くんが動揺するんすか」
小島「いやいや、A普段そういう話せえへんやん!」
皆の視線が一気に私へと向く。
A「あ、ごめん。特に深い意味はない。」
末澤先輩がクスクスと笑い始めた。
末澤「たまーに天然出るよな、A」
網から漂う熱気のせいか、頬が熱くなっていくのを感じた。
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作者名:ピンキ | 作成日時:2023年1月17日 15時