《枯れた薔薇はいらない》 ページ10
「…いつ見ても綺麗ね…」
私はアーサーの家に訪れた。彼の庭はいつもと同じく薔薇が綺麗に咲き誇っていた。
「ったりめぇだろ?誰が世話してると思ってんだよ。」
不意に後ろから声が聞こえた。その声はとても懐かしく感じられた。
「アーサー…久しぶりね。」
彼はあぁと言いながらこちらへと近寄った。彼は薔薇を眺めながら悲しげな目をした。
「お前の目に、俺は今、どう映ってるか?」
突然の質問に少し戸惑った。
彼の堂々とした態度。凛とした瞳。キラキラ輝く綺麗な髪の毛。可憐な仕草。
「…とっても綺麗な薔薇…かしら。」
そう言うと、彼は、ははっと乾いた笑みを溢した。
「これから…この薔薇の花も…俺も…枯れていくんだろうな…」
そう言いながら薔薇の花を1つもぎ取る。それを見つめる彼の目は光がなかった。
「ほら、こんな風に。」
彼はその薔薇を宙に浮かせる。その薔薇はもともと枯れかかっていたが、地面に落ちた瞬間、花びらが散った。
彼が何を言いたいのか何となくわかった。
「……散っても…また咲くでしょう?」
花は枯れても、新しい芽ができ、また花を咲かせる。
「残念だが、この薔薇はもう咲かない。…薔薇は園芸用の植物なんだ。人の手入れがなくなった瞬間、もう綺麗に咲くことはない。」
あなたは…何を言いたいの?私に何を望んでいるの?
「…なら、私が手入れしてあげる。…失敗しても…何度でも…」
その言葉が聞きたかったと言うかの様に彼はニヤッとした。
「なら…お前は俺のもとを離れないよな?」
その笑みを見て、昔の恐怖が蘇る。それは、彼、アーサーとアントーニョ辺りで盛んだった大航海時代。
この二つの国は私(世界)を巡って戦っていた。
硬直して突っ立っていることしかできない私をまるで宝物を扱うかのようにぎゅっと優しく抱きしめるアーサー。
何が起きたのか把握できたとき、私は思わず彼を突き放してしまった。
「いやっ‼」
そんな私を悲しげな目で見るアーサーに耐えきれなくなり、私はうずくまる。
「ごめん…ごめん…」
ただひたすら謝罪の言葉を呟き続ける。そんな私の頭を今度は優しく撫でる。
もう…わからないよ…
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紀田日和(プロフ) - TATさん» コメントありがとうございます!続編にも行きましたので、これからもよろしくお願いします! (2016年3月21日 21時) (レス) id: 588f4773fd (このIDを非表示/違反報告)
TAT(プロフ) - 話が素敵でみはいってしまうほどいい話なので頑張ってください!!(^▽^) (2016年3月5日 22時) (レス) id: 9358c251dd (このIDを非表示/違反報告)
ふにゃこ(プロフ) - 最初は設定に驚きつつ読んでいましたが、気付ば一気読みしていました!今後がどうなるのかすごく楽しみです!!このコメを見ている頃にはもう終わっているのかもしれませんが、テスト、頑張って下さい。 (2016年2月18日 0時) (レス) id: a9be79f543 (このIDを非表示/違反報告)
紀田日和 - 亜里沙さん» 読んでくださり、本当にありがとうございます!飽き性な私なのでもしかしたら…いや、考えたくはないですが、続かないかm((((…いえ!そんなことはしません!!絶対に完結させますので、ぜひこれからもよろしくお願いします! (2016年2月11日 0時) (レス) id: 588f4773fd (このIDを非表示/違反報告)
亜里沙(プロフ) - 読んでいくうちに泣いてしまいました。(本当です)その後に起きる次の大きな戦争まで考えたらつい…。いきなりこんなコメしてすいません。これからも楽しみにしています (2016年2月10日 19時) (レス) id: 289ef2f364 (このIDを非表示/違反報告)
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