溺れた海賊旗③【ONE PIECE 短編集】 (ページ19)

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ローside

「私はA。よろしくね」

女は回復してすぐ自己紹介をした。
顔は笑っているのにそれが笑顔だとは思えない。

「…死のうとしただろ」

その顔が俺には"助けて"と言ってるよう見える。

放っておいても良かった。
次の島で下ろせば良かった。

この女がどうなろうが俺には関係ねェのに。

「本当に医者なんだ」

「そうだ！キャプテンはスゲェんだ！」

自慢げにするベポの前に手を出す。

「理由を言え」

「どうして？」

言いたくねェのか…？
何を考えてるか全く読めない。

「…じゃあ、あなたにだけならいいよ」

そう言って俺を指差す女。

「人を指差すんじゃねェ…」

「あはは、そうだね。ごめんね」

「…お前ら、出てろ」

女が…Aが発する全ての言葉は軽かった。
クルーたちにそう言うと小言を呟きながらも出て行った。

「船長さん」

「ローでいい」

お前の船長じゃねェからな。と言うと笑った。
さっきまで死にそうだった奴だとは思えねェ。

「どうして私が死にたいと思ってるの分かったの？」

「睡眠薬だろ、それくらいわかる」

Aは睡眠薬の大量摂取で死にかけていた。
あと少し遅かったら死んでいただろう。

「そっか、さすがだね」

「本題に入れ」

睨みを効かせると少し俯いて話し始めた。

「生きる意味が分からない」

これがAの本性。
さっきまでの作られた顔も消えて鋭い目が俺に向けられた。

「どうせ死ぬのなら若いまま…綺麗なまま死にたい」

コイツの人生に興味はない。
どこか昔の自分と重ねたのは間違いだった。

俺は、生きる選択肢がなかった。

コイツには、死ぬ事を選択した。

「死にてェなら船から下ろしてやる」

「ふふ、救い損だね」

「…黙れ」

俺はコイツが嫌いだ。