〇 ページ43
「本当に見るつもりは無かったんです」と慌てる店員さんと、何も言えずにぽかんとしてる私とエイジ。
どの辺を見たのか恥ずかしいから敢えて聞きはしないけど、私たちの関係性がバレてしまったのは確か。
店員さんだから個室の中の様子を伺うこともあるよな…そうか、そういうバレ方があったか…と、一人で考える。
「聞こえたが正しいっていうか…」
弁解に必死な、あまりに素直な態度に、なんだか胸が苦しくて。
大人しそうな見た目と目の泳ぎ具合が
そんなに悪い人ではないような気がして。
「まあそういう事なんだけど…どうしよっか笑」
とりあえず一旦、
単刀直入にその事実を認めて、場を和ますようにエイジを見上げると、エイジはちらっと私を横目に見て、店員さんに目を戻す。
そして、
「コレあなたしか知らないと思うんで。内緒ね」
赤い髪をポリポリとかきながらそう言った。
声がいつになく優しいエイジ。顔もやっぱり少し微笑んでいて、優しい。
その様子に少し安心した。
「はい！もちろんです」
「頼みますよ」
「私からもよろしくお願いします」
私たちの言葉にコクコクと大きく頷いた店員さん。
エイジと2人して本当にありがとう。とお礼を言い店を出るも、店員さんにバレた時から胸の鼓動がおさまらない。
たまたま今回は、バレた人が良い人だったから大事にならずに済みそうだけど、これが隠し撮りなどされていようものなら、本格的に家でしか会えなくなる。
帰り道の電車で、下の方で繋がれた手を見てそう思った。
隣のエイジを見ると、行きと同じように遠くを見つめてる。
同じことを考えているのだろうか。
私の最寄り駅になると、エイジも一緒に電車から降りて、それと同時に手が離れる。
「じゃ、またね」
私が言うと「うん」と小さく頷いた。
「…一週間後ぐらい暇？」
「うん、暇」
「じゃあ家おいでよ」
「行く！」
私が言うと、エイジは嬉しそう笑って、それだけで嬉しくて。
「まだ帰りたくないな〜」
自分から帰ろうって言ったはずなのに、ヘラヘラ笑ってそんな事を言うエイジに、ドキッとした。
「編集しなきゃなんでしょ？」
「そう。もう三日もサボってるから笑」
「もう、早く帰りな笑」
「まだ一緒にいたいくせにそういうこと言う笑」
「いたいけどね」
私の言葉に少し驚いたエイジは、直ぐにニヤッとして私を抱きしめる。
「ちょ、見られたら」
「今こうしたいの」
そんな事をサラッと言って、そのままやって来た電車に何事も無かったかのように乗り込むエイジは、やっぱりずるい人だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 844人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
02番(プロフ) - Almaさん» ありがとうございます！嬉しいです！ (2019年4月1日 21時) (
レス) id: 23e627fa3b (このIDを非表示/違反報告)
Alma(プロフ) - めっちゃ良いです！！大好きです！！ (2019年3月31日 11時) (レス) id: 1946b84f54 (このIDを非表示/違反報告)
02番(プロフ) - こうめさん» 光栄過ぎます……ありがとうございます！頑張ります！ (2019年3月29日 8時) (レス) id: 71e1527443 (このIDを非表示/違反報告)
こうめ(プロフ) - 私、このお話すごい好きです、、今読んでいる中で一番です（ ; ; ）更新楽しみにしています。頑張ってください！！ (2019年3月28日 4時) (レス) id: b5712753e7 (このIDを非表示/違反報告)
02番(プロフ) - Le mont saint michelさん» ありがとうございます！楽しみにしていてください！ (2019年3月27日 18時) (レス) id: 71e1527443 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：02番 | 作成日時：2019年3月9日 17時
