家族のカタチ (ページ7)

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「だって、ワンちゃんいたんだもん。」

叱られた祐くんが、不満そうにいう。

「あ、鳥居のところでこの犬を見つけたみたいで、祐くんが一緒にいたところをウチのクラスの生徒が見つけたんです。」

「そうなんですか。
その生徒さんたちにも、よろしくお伝え下さい。」

先生が頭を下げる。

見た目の通りだけど、とても丁寧な人だ。

「にぃ！祐くん、この子欲しい！」

「祐くん、お家じゃ飼えないでしょ。
お家を出ていけって言われちゃうよ。」

犬を飼いたいとねだる祐くんに、先生は宥めるような口調で言う。

先生もアパートか寮かに住んでいるんだろう。

ダメだと言われた祐くんは、一旦引っ込んだ涙の膜を、再び出現させている。

「でも、またそこらへんに置いておくのも可哀相だよね。」

中丸が、祐くんに聞こえないようにボソりと呟く。

「こういうときは、保健所に連れて行くんだろ。」

「でも、それって処分されるんじゃ…」

シゲの言ってることは正しいことなんだろうけど、やっぱり可哀相だ。

「俺、団地だから買えないんですよ。
橘先生のところはどうですか？」

「ウチもやっすいアパート。
シゲだって似たようなものでしょ？」

「まあな。」

ということは、残る選択肢は1つしかない。

「増田のところならいけるよね。」

急に名前を出された増田は、ここぞとばかりに嫌そうな顔をしている。

「なになに？怖いの？」

「貴久、昔から犬苦手だもんな。」

「うっせー、だいたいこういうのは許可がないと。」

増田の家に許可を取ることなんて、朝メシ前だ。

私はスマホを手に取り慶ちゃんに電話をする。

「もしもし？」

「ああ、A？
もしかして、また貴久になんかあった？」

慶ちゃんが日々こんなに貴久のことを思っていることを、本人は知らない。

不安そうな慶ちゃんの声を落ち着かせるべく、本題に入る。

「犬拾ったんだけど、そっちで飼えない？
可愛い柴犬。」

「え、いいの？飼いたい飼いたい！
子供達もきっと喜ぶよ！」

「増田、許可取れたよ。」

マジかよと呟く増田は無視して、しゃがんで祐くんに目線を合わせる。

「祐くん、このお兄ちゃんのところで、ワンちゃん飼ってくれるって。
だから、ときどき遊び連れて行ってもらうことにしたら？」

「そうなの！ありがとう！」

キラッキラの笑顔でそう言われると、さすがの増田も冷たくはできないようで、曖昧に返事を返した。