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中山道さん45 ページ48



 高崎は大人しく帰ると言った東海道とそれに頷いた宇都宮に、不
満を漏らしていた。

 自分だけが中山道と居たいと言っても、本線二人の言葉に敵うは
ずもないのだ。だから、大人しく彼等に倣った。そしてIGRの協力
で外に出てから、宿舎に戻ると不満をそのまま口に出す。

「キミさ、僕等があんなのに納得してると思ってるの?」

 宇都宮は言った。視線は高崎に真っ直ぐ向いており、バッカじゃ
ないの? と言外に言っているのが、はっきりと聞こえる。

 高崎は視線を逸らした。

 それもそうだと思ったのだ。
 彼等は、中山道が連れ去られたというのを最初に気が付くほど、
彼女に依存していたのだから。
 そして、あの時期は酷かった。
 中山道を連れ戻そうとしても無駄だと分かったのだ。彼女がどこ
にいるのか、特定できなくなっていた。
 人間達の悪足掻きだと探し出そうとしたが、結託した人間達は面
倒だった。やっと分かった時、彼女は再び隠された。だから、時期
を見ることにしたのだ。中山道を連れ去った人間が死ねば、戻って
くると信じて、その時期を待った。


 ――まさか、他の人間の手に渡しているとは思わなかった


 そして、廃線施設ができたと聞いた。そこに中山道がいることは、
向こうからの知らせで分かっていた。しかし、そこに入ることは固
く禁じられていて、現役路線はその場所を知らされなかった。

 死にたくなるほど悔しかった。

「今が時期なんだよ。だから、もう遠慮はしねぇよ。中山道を取り
戻す」

 東海道の言葉に、高崎は笑う。
 彼がそう言う時は必ず、何かある。彼は本気で中山道を奪うつも
りでいる。それならば、自分もそれに協力するだけだ。

「あの、篠山鉄道、使えるんじゃねぇの?」

 高崎の言葉に、東海道と宇都宮の視線が向いた。
 元篠山鉄道。あの、中山道の手元から、こちらに来たあの元鉄道
線。あれは中山道達の事をよく知っているはずだ。
 恐らく、今こちらを警戒しているIGRよりも、そちらを利用した
方がいいのではないか。

 下衆い考えだということは分かっているが、それよりも、こちら
の方が大切なのだ。

「そんなことせんでも、俺が協力する」

 今この場にあるはずのない声が聞こえ、そちらを見れば、IGRが
頭をかきながら立っていた。その隣には篠山鉄道がいる。

 どうやらすべて聞かれてしまっていたようだ。


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設定タグ:青春鉄道 , 二次創作
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聖藍萌愛亜(プロフ) - ぴよっちさん» わかりました!読み返しながら待ってます。 (2017年1月22日 18時) (レス) id: 1ec8964610 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよっち(プロフ) - 聖藍萌愛亜さん» コメントありがとうございます。返信にお時間が経ってしまって申し訳ないです……。続きが気になると言っていただけてとても嬉しいです!修正してからもう一度更新していこうと考えているので、よろしくお願いいたします (2017年1月22日 17時) (レス) id: a592d04503 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよっち(プロフ) - 彩楓さん» コメントありがとうございます。お時間が経ってからの返信ご容赦ください。すごいと言っていただけてとても嬉しいです!修正して再び更新したいと思いますので、よろしくお願いいたします! (2017年1月22日 17時) (レス) id: a592d04503 (このIDを非表示/違反報告)
聖藍萌愛亜(プロフ) - 青春鉄道にハマってから時間があまり経っていませんが、大好きです!とても面白くて続きが気になります……!無理をしない程度に、更新頑張ってください!! (2017年1月21日 23時) (レス) id: 1ec8964610 (このIDを非表示/違反報告)
彩楓(プロフ) - はじめまして!青春鉄道だいすきになってから4年が経とうとしてる彩楓です!凄い小説ですね!私も見習わなくちゃ!これからも頑張ってください!! (2016年12月28日 10時) (レス) id: e14b6601c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよっち | 作成日時:2016年1月10日 2時

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