中山道さん37 ページ40
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「……東海道本線は、俺達から中山道さんを奪うんですか」
ボーっと中山道を眺める東海道に、小さな声で問いかけたのは、
東海道と共に彼女にここに連れられてきた元東武矢板線だ。彼は不
安げに東海道を見上げていて、しかし、その眼には、にわかな嫌悪
が浮かんでいた。
――あぁ、コイツ等は
それに気が付くのには時間はいらなかった。
自分達とて、彼等と同じような自覚はあるのだ。だから、彼等が
中山道を本気で慕っていることは、分かる。あの篠山鉄道も、これ
と同じ目をしていた。彼女を、中山道を奪うのかと。
自分達が昔、人間達にしたような表情だ。
――中山道をどこに連れていくんだ。
――中山道さんを返せよ!
――僕達が中山道さんを養えるよ!
まだ、幼かった自分達は、――言い訳にしかならないが、同じく
らいの少女に酷く依存していた。そして、彼女を守れると本気で思
っていたのだ。それが、過信だと気が付いたのは、中山道が奪われ
た後だった。幼かったから、という言い訳はできない。
ただ、単純すぎたのだ、自分達は。だから、人間に騙された。
「奪わねぇよ。そんなこと、中山道が嫌がるからな。俺達は、少な
くとも俺は中山道が嫌がることはしない。アイツが望むのなら、俺
はお前等ごと助けてやるよ」
手の届く場所に、中山道がいる。次こそは、彼女を誰にも奪われ
ないために、自分はこの地位を守り続けて来たのだ。
今なら、彼女を助け、彼女の仲間も外に連れ出すことができる。
そうすれば、彼女は誰にも手出しはされない。そして、自分達と
いてくれるだろう。そうに決まっている。彼女はとても優しい人格
を持っているから。
――だから
「俺達は、もう、この施設の職員に遠慮なんかしねぇよ」
今までとは違うのだ。
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聖藍萌愛亜(プロフ) - ぴよっちさん» わかりました!読み返しながら待ってます。 (2017年1月22日 18時) (レス) id: 1ec8964610 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよっち(プロフ) - 聖藍萌愛亜さん» コメントありがとうございます。返信にお時間が経ってしまって申し訳ないです……。続きが気になると言っていただけてとても嬉しいです!修正してからもう一度更新していこうと考えているので、よろしくお願いいたします (2017年1月22日 17時) (レス) id: a592d04503 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよっち(プロフ) - 彩楓さん» コメントありがとうございます。お時間が経ってからの返信ご容赦ください。すごいと言っていただけてとても嬉しいです!修正して再び更新したいと思いますので、よろしくお願いいたします! (2017年1月22日 17時) (レス) id: a592d04503 (このIDを非表示/違反報告)
聖藍萌愛亜(プロフ) - 青春鉄道にハマってから時間があまり経っていませんが、大好きです!とても面白くて続きが気になります……!無理をしない程度に、更新頑張ってください!! (2017年1月21日 23時) (レス) id: 1ec8964610 (このIDを非表示/違反報告)
彩楓(プロフ) - はじめまして!青春鉄道だいすきになってから4年が経とうとしてる彩楓です!凄い小説ですね!私も見習わなくちゃ!これからも頑張ってください!! (2016年12月28日 10時) (レス) id: e14b6601c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴよっち | 作成日時:2016年1月10日 2時