中山道さん30 ページ33
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篠山鉄道の熱が下がったのは、翌日だった。
驚異的な治癒力に、一番篠山鉄道本人が驚いていた。
鉄道が怪我の治りが早いと言うのは聞いたことがあったが、普段
は怪我が治る前に新しい怪我ができるので滅多なことでは治らない。
だが、だからこそ、篠山鉄道は目の前の状況に頭を抱えたくなっ
た。すっきりした頭では、見たくない光景だ。
本線が2本に、主要幹線が1本。逃げたくないわけがない。
しかも、宇品は居ない。
篠山鉄道は黒のスラックスにワイシャツを着て、彼等の前の椅子
に腰を下ろす。彼等も揃って椅子に腰を下ろしていて、自身を静か
に見ている。現役路線達のいる場所の設備はいいものを揃えている
のだな、と頭の片隅で思いながら説明される事を聞く。
そして、理解した。
中山道は、自分を罰則から逃すためだけに彼等に渡したのだ。な
により、彼女は仲間と職員を間違えない。誰がどうしているのか正
確に把握されている。驚きはあるが、長年の付き合いで、彼女の鋭
さと頭の良さは知っているつもりだ。己の考えは、強ち間違ってい
ないだろう、と篠山鉄道はひとまず思考を落ち着けた。
「で、何が聞きたいので? 現役路線様」
中山道の温かい心遣いを今自分がここにいるせいで、仇で返して
いるのだ。施設に不利になる情報は、絶対に言わない。この本線達
がずっと彼女を探しているのも知っていたし、お互いに思い違いが
あるとも知っていた。
それでもなお、何も言わなかったのは、そういうことだ。
現役を退いてからも、ちょいちょい東海道本線や山陽本線、福知
山線とは会っていた。上官、まではさすがに会おうとも思わせない
仕打ちを、彼の廃線直前にしているから、それはなかったが。
それに、彼は結局会いに来てくれなかったのだ。
山陽本線や福知山線、東海道本線が様子を教えてくれていたから、
彼の生活については知っていたし、伝言も預かってきてくれていた。
暇だ、なんだと会いに来てくれた本線や福知山線は、いろんな話を
してくれたのだ。
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聖藍萌愛亜(プロフ) - ぴよっちさん» わかりました!読み返しながら待ってます。 (2017年1月22日 18時) (レス) id: 1ec8964610 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよっち(プロフ) - 聖藍萌愛亜さん» コメントありがとうございます。返信にお時間が経ってしまって申し訳ないです……。続きが気になると言っていただけてとても嬉しいです!修正してからもう一度更新していこうと考えているので、よろしくお願いいたします (2017年1月22日 17時) (レス) id: a592d04503 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよっち(プロフ) - 彩楓さん» コメントありがとうございます。お時間が経ってからの返信ご容赦ください。すごいと言っていただけてとても嬉しいです!修正して再び更新したいと思いますので、よろしくお願いいたします! (2017年1月22日 17時) (レス) id: a592d04503 (このIDを非表示/違反報告)
聖藍萌愛亜(プロフ) - 青春鉄道にハマってから時間があまり経っていませんが、大好きです!とても面白くて続きが気になります……!無理をしない程度に、更新頑張ってください!! (2017年1月21日 23時) (レス) id: 1ec8964610 (このIDを非表示/違反報告)
彩楓(プロフ) - はじめまして!青春鉄道だいすきになってから4年が経とうとしてる彩楓です!凄い小説ですね!私も見習わなくちゃ!これからも頑張ってください!! (2016年12月28日 10時) (レス) id: e14b6601c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴよっち | 作成日時:2016年1月10日 2時